この世界にいる理由
ケルン・クォタリアム。
通称姫様取りゲーム。
それは人類が二つの大国に別れて争う世界大戦よりも、更に六百年古い時代に生み出された、歴史あるボードゲーム。
その当時、とある大陸は戦国時代に突入しており、略奪結、誘拐婚は当たり前だったらしい。
我こそが覇者であると誰もが声高らかに掲げ、血筋のために様々な部族の姫が攫われていった。
歴史的によくあることとは言え、実際被害に遭った彼女達は大きく傷ついただろう。
マジ蛮族のやり方だ。
とは言えその時代では当たり前だったから、そういう文化がやがて遊びに反映されるのは自然な流れだった。
大陸が平定され、安定した時代においても、かつての名残は存在し続けた。
互いの姫を手に入れるため二つの部族が争い合う状況が盤上で再現されたのだ。
それがケルン・クォタリアムというゲームである。
このゲームはある意味平和の象徴とも呼ばれた。
何故ならいくら戦おうが、姫を奪い取ろうが、ゲームが終わればすべてが無かったことに出来るからだ。
それは争いが形骸化した証で、すべてが過去となり、それを娯楽にしてしまえくらい、憎悪と悔恨がなくなったという意味でもあった。
やがてそれは和平の象徴としても機能し、同盟相手にゲーム盤を贈り合うことが多くなったっていったという。そしてその流れから、婚姻の際の祝いの品としても重宝されるようになった。
そこにはこんな意味が込められていたらしい。
昔の時代において嫁に行くということは、娘を奪われたことと同然、財産を強奪されるのと同じだった。でもこのゲームのように、娘を奪われたことの恨みは白紙に戻す。
それよりも、互いに協調し、裏切らないようにしよう……そんな約束の証としての結納品になっていったのだ。
まあ実際には裏で牽制しあったりもしていたようで、完全に同盟が破棄、決裂された場合には、ゲーム盤は捨てられたり壊されたりしていたそうだ。
このことから仲が拗れる、仲が戻らなくなることを、「ゲーム盤が破壊された」、「盤上を叩き割る」、と言うようになっていったとか……。
とまあ、これがケルン・クォタリアムの主な概要である。
歴史好きな俺としては大変興味深く、もっと掘り下げたいところだが、これ以上は余分なので以下割愛。
それからここまで解説してくれたエメラルは、次にルールを説明してくれた。
まずこのゲームは黒と白の二つの陣営に別れてプレイする。
それぞれ六種類計十六駒を操り、敵の姫の駒を取ることを目的とする。
はっきり言ってしまえば、チェスとそう変わらない。多少駒の呼び方と形が違うだけで、ステイルメイトもキャスリングも出来る。俺はチェスのルールを知っていたので、特にこんがらがるということもなかった。
いや……我ながら何でこんなことを知っているか不思議だけど。一人でネット対戦とかしてたんだろうか。
してそうだな俺……チェス出来るのかっこいいもんな……。
と、そこで一応全部の話が終わり、駒の色を決めようと言う段階で、ふとエメラルがこう提案した。
「じゃあ君が白で、私が黒にしようか。お先にどうぞ」
「良いんですか?」
俺がちょっと驚いてエメラルに確認すれば、エメラルは首を振る。
「良いよ。後手の方が好きだから」
とニヤリと笑いながら答える。俺はそれなら……と白い駒を手に取る。
基本的にこういうゲームの場合、先行である白が有利だ。
断る理由はない。
そして、無難にポーンに該当する駒を動かした。とりあえず初手で二マス進める。後ろに控える他の駒が動ける余地を作るためだった。
これで俺の手番は終了。
お次はエメラルの番が回ってくる。
彼はナイトの(役割をする)駒を前に出してきた。
こちらも無難な手だ。どうせ最初はポーンかナイトしか動かせないのだし、ガンガン攻めようということだろうか?
――そういう具合に互いに駒を進めていった。
で、結果は。
「……負けた」
意外に接戦だったが、最後にクイーン(っぽい役割の駒。族長らしい)でチェックメイトされた。
頑張っただけに悔しい。というかこの人超強えんだけど。
覚えたてらしいけど絶対嘘だ。
しかも、「いやぁ、やられそうでヒヤヒヤしたよ。すごかった」などと言ってるくせに、ニマニマ笑ってる。
それに、頭の奥でプチンと切れる音がした。
駒を元の配置に戻し、言う。
「……もう一回」
「ん?」
「もう一回です。対戦よろしくお願いします」
するとエメラルも乗り気になったのか、煽るように返事を返した。
「ん、じゃ良いよ。ま、私に勝てるとは思えないけどね」
「……そう言えるのも今のうちです」
そうして再度互いに駒を進め合った。
そして――
「また、負けた……!」
パーペチュアルチェックどころかステイルメイトも出来なかった。
最初は善戦していたのに、いつの間にかやられてしまって、こっちが追い込まれていたのだ。
やはりあの時ビショップ(ぽい)駒を前に出すんじゃなかった。アレを取られてプロモーションをされたから、クイーン(族長の駒)を奪ったにも関わらず、自由に動けるルーク(こっちではチャリオット)にされて、自陣営をズタズタにされた。
ナイトがもういなかったから駒を引き寄せられなかったし。キングを動かそうにもポーンが邪魔するしで、今思い出してもムカムカする。
そんな風にうぐぐ……と呻きながら悔しがっていると、エメラルはよほど嬉しかったのか、万歳をし始めた。
「よっしゃー! 今度もまた勝った!!」
恥ずかしげもなく声を上げ、良い笑顔で、ガッツポーズもしながら。
その仕草は、何処かライラを彷彿とさせる。
もしかしたら、彼は見てくれ通りの落ち着いた人ではないのかもしれない。
その……言いたくないが、どうやら根は子供っぽいらしい。
滅茶苦茶意外である。尚も喜んでいるエメラルは、どーよと言わんばかりに得意気だ。
俺はそれにしばし目を瞬かせ、素直に、「参りました」と言う。
どう取り繕っても負けは負けなのだし。ただし次は負けない。次は勝つ。
そう密かに決意を固めていると、何やら生暖かい視線が向けられていた。
不思議に思ってると、エメラルの表情が段々と穏やかになり、上げていた腕を下ろし、再びテーブルの上で両手を組んだ。
「……で、どうだったかな? 面白かった? このゲーム、楽しい?」
「楽しい……というと……」
「だって君、ずっと笑ってたから。目をすごいキラキラさせてさ」
「……?」
指摘され、促されるように口元に触れる。
すると、ああ、確かに――俺は笑っていた。
ほんの少しだけど、口角が上がっていたのだ。
この世界に来て心から笑ったのは、きっとこれが初めてだった。
「あ――」
何故か呆然となる。
それは生前も含めて忘れていた感情だからに違いない。
何かを楽しむ――何かに心躍らせる。
それは本当に久しぶりなことだったのだ。
何と言って良いか分からず、言葉が詰まる。
「え、えと……」
「んー、もしかして後ろめたいのかな?」
なのだが、エメラルの目が細くなり、ドキッとなる。図星を突かれたような気分になり、困惑する。
エメラルの表情がまた変わった。それは真剣ながら冷たい顔だ。
「そんな風に思う必要ないのに。資格がないとか、幸せになっちゃいけいとか……それほどくだらないものはないさ。それは死んでいるのと同義だよ。生きているからこそ……人は自身の気持ちに素直にならなきゃ――ぞんざいに扱うのは許さない」
最後にやけにはっきりとそう告げて。
緑の瞳の奥の方で、一瞬だけグチャっと闇が蠢く。
ゾッとなる。またも言葉を失う俺。気のせいなのか、エメラルは元の困ったような微笑に戻っていた。
「っと、……まずはごめんね、付き合わせて。ちょっと強引ですまなかったよ」
「い、いえそんな。俺の方こそもう一回とねだって……」
「いやいや良いんだよ。これは私の我儘だから」
エメラルはそんな風に気遣い、それから驚くことを言う。
「この間ライラちゃんに会ったから、つい君にちょっかいをかけたくなったんだ」
「え――」
思わず息を飲んだ。エメラルの声は静かだ。
「それで彼女さ、何をしてたと思う?」
「それは――」
その瞬間、俺の頭にいくつもの予想が浮かぶ。
不貞腐れているのかもしれない。案外気にしていないかもしれない。それとも、ショックで元気がないのかも……そうなると、そのすべてが俺のせいだった。
心が痛くなり、俺は耐えられなくなって、早く答えを言うように視線で投げかけてしまう。
エメラルは淡々と答えた。
「ハナビさんのところでお店の手伝いしてたの――君の気持ちと似た人を紹介してもらうために。その人から話を聞いて、君の気持ちを理解するために」
「……な」
またも驚き、瞠目する。
ハナビ――と言うのは売店をやってる人だったか。
そんな人を手伝って、お金じゃなくて、俺との仲直りのために情報を提供してもらうなんて……馬鹿だと思った。
大馬鹿だ。アイツはいつも俺のために何かしようとしてくる。
そんな必要ないのに、ただ大切だからって、そこまでするかよ普通。
「良い子だね。ライラちゃん」
エメラルはポツリと呟く。
「ある程度彼女から事情を聞いたけど、君を追い詰めてしまったのを後悔してるみたいだった。だから怒ってるかもしれないけど、そこはどうか認めてあげて欲しい。……彼女みたいな子は貴重だから」
「そんなの……」
言われるまでもない。
正直エメラルにペラペラ喋ったのはいくらか文句はあるが……それでも
俺はアイツのことを憎からず思ってる。味方になってくれるかもと期待した。
でも、どうしてか顔を合わせるのが怖いのだ。
アイツにいざ何かを言われると思うと、身がすくむ。こっちが悪いって分かってる分余計にだ。
どうすれば良いか分からなくて顔をくしゃりと歪ませる。
反対に、エメラルは視線を逸らさず、真正面から問いかけた。
「それで、君はまだこの世界に絶望してるのかな? 死にたがりのニニ君」
「――……!」
途端に思考が止まった。
誰にも……それこそライラにも言っていなかった心の内を見透かされた。
固まっていると、エメラルは当然のように言った。
「君がこの世界の情報をダウロードした時、私もその場に立ち会っているんだよ。あの時のあの表情。アレはどう見たって絶望した顔だったでしょ――何でこんなことに? って言いたげなところが特に引っ掛かったんだ」
「……」
「――私は君が心配なんだよ……何処か危うくて、どっかに行っちゃいそうで」
そう言うエメラルの顔は、とても優しい。
面白がってるとかいう雰囲気が感じられない。
「で……もう一度聞くけど、君は心の中ではどう思ってるのかな。私は赤の他人だし、そこまで君と親しくないけどさ。だからこそ話せることもあると思うよ。抱え込んだままじゃ見えなくないこともあるしね。勿論、無理にとは言わないけど……」
「お、俺は……」
そんな風に促され、戸惑いから口をまごつかせる。
こんなことを言って良いのか?
本当に? 逡巡する。でも、思えば限界だったのかもしれない。
気付けば、ポロポロ、拙くても、想いが溢れてしまう。
「お、俺は――本当は、どこかに行ってしまいたかったんだ」
そうだ――俺は前の人生のことをあまり覚えていないけど、多分、その世界から逃げ出したくて仕方がなかったんだ。
人と関わるのが怖くて、辛くて頑張るのをやめてしまいたくて。
その手っ取り早い手段が自殺だったのだ。
俺は、自由になりたかったのだ。
「それに自分をやめたら、もっと心が軽くなるんじゃないのかと思った……ぐるぐる考えがちで、我ながらネガティブだし、ビビりだし……それがいちいちしんどくて、目の前に映る世界は救いようがない気がした……」
だからすべてが無価値に見えた。
いじめられて、自分自身が誰の役にも立たない人間だと感じて。
「だって上手くやろうとしても、上手くいかないんだ……他の人達はもっと上手に生きれてるのに……お、俺は、あの人の意思を蔑ろにし続けるダメ人間だ……ちゃんとやるって約束したのに……それすら守れないとか、お、俺は、その時点で、ゴミで――」
溢れていく。零れ落ちる。
ボロボロ、ボロボロ。俺の知らない内側まで、崩れていく。
それから、と俺は続けて。
「ちゃんと俺自身を。屑籠の中に、入れたんだ。裏切りと知りつつ逃げた……それで安心した……あの最後の時……」
これで楽になれる。
胸に疼く安心感は、間違いなく“死の瞬間”感じていただろう。その証拠に、まだ名残のような跡が心に刻まれている。
罪悪感はあっても、しかしそれ以上に、ようやく休めると言う思いがあって――
「なのに、こんなとこ連れて来られて、わ、訳分かんないし。……今更死ぬのが怖いって気持ちとか……理不尽だって怒りもある……うんざりで、グチャグチャだ……」
これは何かの罰なのだろうか。逃げ出したから、俺はこんなところにいるのかもしれない。
ここに来て様々な思いを自覚してしまう。
また目覚められてラッキー。息をしていることにホッとして。何もかも忘れたことに、ある種の爽快感すら感じている。これでもう、少なくとも“あの時”のことで苦しむことはない。
それでも確かにいた大切な人……“あの人”にまた会いたいような気もして。
あの人に焦がれる気持ちがある。
その事実がこんなにも虚しい。
それは大きな矛盾だった。気付けばまた泣いていた。泣き過ぎだ。
「すべて捨てたから、ここにいる意味が何処にもない……俺って生きてて本当に良いのかな」
そこまで言い切って、俺は少しだけスッキリした気分と共に、どうせ言ったって無駄だろうと、投げやりな気分になった。
なんせエメラルは俺の事情なんて何も知らない。そんな彼からすれば、俺の言ってることなんて意味不明そのものだ。
俺の気持ちなんて理解できる訳がないのだ。
だから、いっそ、訳が分からないと断じてくれた方がマシに思えた。
だが予想に反して、エメラルは思いの外、真剣に耳を傾けてくれて。
そして、次にバッサリと言い切った。
「うん。そっか。……なんて言うか君、アレだね。めんどくさいね」
「え?」
素っ頓狂な声が出る。
涙でぐしゃぐしゃなまま、その俺の様子は滑稽に見えただろう。そうして、少し怒りの感情が湧き上がったところで、
「完璧主義過ぎるんだよ、ようは」
と続けられる。
「こうしなければいけないとか、これじゃなきゃ納得出来ないとか、頭がカチコチって意味。もっとさ、シンプルに考えようぜ? ――このゲーム、やってて楽しかっただろう? またやりたいって……そう思ったんじゃないの?」
「……」
俺は言われるままに頷く。
それは誤魔化しようがない事実だ。
「ほら、こんな風に、君、全部をどうでも良いって思ってないじゃない。それは諦めれてない証拠――本当に絶望してたら、人って何も感じなくなるんだよ。君は空っぽなんかじゃないのさ」
「……!」
その途端に虚を突かれる。
本当にそうなのか? ――そう思って、混乱が生じる。
彼の言っていることはいちいち胸がざわつく。
「それなのにこんなゲームに興味を示すなんてさ……ふふ、その時点でここにいる理由が一つ出来たんじゃない? このゲームをもっと極めて、強くなってやろう……とか、そういう目標を持っても良いと思うよ?」
「は……? いや、そんな馬鹿な理由――」
「馬鹿じゃないさ。だったらかつていたって言う芸術家、スポーツ選手とかに、価値はないって言うの? 彼らだって非生産的なことを一生懸命やってたらしいけど?」
「そ、それは――」
「どんな理由であれ、命をかける目標に貴賤はないのさ。そんな単純なことでも、この世界にいたいと思えるのならそれで良い」
そうして何かを思い出すようにエメラルは遠い目をして。
「生きる意味とかぶっちゃけ初めから存在しないからね。そんなもの、後から幾らでもついてくる。大事なのは君の気持ち、君の意思。君が僅かでも生きたいって思ったら、それを本当に否定出来る奴は何処にもいない。どれだけグチャグチャ、ドロドロでも、それも愛すべき君の一部――」
「――――」
「そりゃあ君は今まで辛かったんだろうさ。疲れてるのも分かる。打ちひしがれるのも分かる。けど話を聞いてて、私は君が何処か諦めたくないと思ってるように見えたよ。だったらそれこそ絶望だけがすべてと思わない方が良い。この世界にいて、面白いと思ったこと、自分で放棄しちゃって良いの? 今一度、自分を見つめ直したまえよ、少年」
そう言ってエメラルは、並べられた駒を側にあった専用のケースに入れ、ボード盤と一緒に渡してきた。
「そう言う訳だから、さっきの楽しいって気持ちを忘れないでね。――だから、あげる。ライラちゃんと一緒に遊ぶと良いよ。彼女とは仲良くしてあげてね」
「……っ、……」
「なるべくフラットに、自分の気持ちを考えてみると良い――人は自分の意思を隠すべきではないのだから」
エメラルは最後にそう締めくくって、やっぱり困ったような笑みを浮かべた。
それはとても優しく、とても印象に残るものだった。
◆◇◆◇
――銀髪の少年は、少ししないうちにこの場を去っていった。
そもそも夜が深いのだ。明日の特訓もある。だから引き留めるのをやめたら、素直に彼は帰って行った。
勿論、ゲーム盤をもらった礼を言ってから。その際の迷子になった子供のような顔が、少し笑ってしまうくらい可愛かった。
緑目の天使はさっきのことを思い出した、ふっと笑みを溢す。
「ふふ。やっぱり見てて飽きないなあ、あの子」
そう呟いて、もう一度くすりと笑う。
それは本心からのものであると、その表情が告げている。
と――ふと。
近くの銅像の方から声がした。
「――エメラル」
声は不機嫌そうに、微妙に偉そうに言ってくる。
「早く解除しなさいよ。この術式の効果、未だに慣れないのよ」
「はいはい。分かったよ」
するとエメラルは仕方なさそうに苦笑をして。
片手で頬杖を突きながら、もう一方の手でパチンと指を弾く。その瞬間、まるで化けの皮が剥がれるように空気が揺らぐ。像を結ぶと、人影が現れた。
それは薄紫色の髪の天使の少女、ライラだ。
彼女はエルフォリア•ハリルを胸に抱いて、瞳を振るわせていた。
「それで、さっきのニニ君の話を聞いて、どう思ったのかな?」
エメラルはそちらの方を向き、問いかける。
ライラは顔を下げ……それから一筋だけ涙を流した。
ざっくり設定12
ケルン・クォタリアム
魔機大戦よりも更に六百年前に生まれたボードゲーム。ケルンとは北方地域の名前、クォタは神聖言語で姫、タリアムは駒を奪い合う盤上遊戯のことを指し、その名の通り通称は通称姫様取りゲーム。略称はケルム。
六百年前の部族間による姫の略奪婚の戦争がそのままゲームと化したもので、姫様の駒を取れば勝利となる。
ルールはチェスと一緒。ポーンが兜を被った兵士、ナイトは飼い慣らされた魔獣。ルークはチャリオット、ピジョップが騎兵、クイーンが族長、そしてキングが姫である。
戦争を娯楽にしてしまえるくらい憎悪がなくなったということで、平和の象徴とされてきた。同盟の証に贈られることも多く、結婚の結納品ともされてきたが、同盟を破棄する場合、そのままゲーム盤が壊されることも多かったと言う。そのことから、仲が拗れる、仲が戻らなくなることを、「ゲーム盤が破壊された」、「盤上を叩き割る」と表現する諺が生まれた。