表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/14

第11話 デーモン

 悪魔のように変化したホブゴブリンによって、リオルの胸が貫かれた。


「がふっ……!!」


 せき込むようにリオルの口から血が飛び出す。ドクドクと胸から血が流れる。

 しかし、リオルはすぐに剣を握りなおして悪魔の首へと振るった。

 ブン!!

 刃先は空を切る。悪魔は軽々と攻撃を避け後ろへ飛び退いた。

 不思議そうに血にまみれていた手を眺める。リオルを貫いたはずの手は血濡れていない。


(まさか、ゴブリン退治で《《死ぬ》》とは思わなかった……)


 リオルの胸元に傷は無かった。代わりにぽっかりと服に穴が開いている。

 体を貫かれたのは幻覚じゃない。

 リオルは一度死んだ。


(油断してたわけじゃない。あのゴブリン……が変化した奴の動きには注意していた。それでも避けられなかった。動きが読めなかった……)


 魔力から動きを先読みする技が通用しなかった。

 あの悪魔のようなゴブリンの動きには、魔力の流れが見えない。

 こうなってはリオルはただの子どもだ。

 今のリオルは身体能力が低く、魔力も少ない、か弱い子どもである。

 辛うじて魔力から動きを先読みするという特殊な技術でゴブリンたちと渡り合っていただけなのだ。


 一方で変化したゴブリンは強い。

 一撃でリオルの胸元を突き刺すような腕力と、一瞬で距離を詰める速さを持っている。

 力量の差は明確。

 大人と子どもどころか、ありと巨人くらいに力の差が開いている。

 絶望的な力量の差。常人であれば早々に勝負を諦めて命乞いを始めるような状況でリオルは。


(良いね。楽しくなってきた)


 笑っていた。

 当たり前である。『ドラグ・マキナ』の世界では、ずっと自分よりも絶望的に強い化け物たちと戦ってきた。

 絶望的な力量の差? 

 そんな物は慣れ親しんだ旧友である。久しぶりに会えて嬉しいくらいだ。


 諦めて命乞いをする暇なんてない。

 せっかく出て来てくれた絶望を楽しむために、リオルは勝つ算段を整え始める。


(そもそも、アイツは何者かな? 明らかに怪しい儀式によってホブゴブリンが変化してたけど……もしかして見た目通りに悪魔とか? ホブゴブリンの体を依り代に召喚された悪魔とかなら納得かも。とりあえず、『ゴブリンデーモン』とでも仮称しようかな)


 リオルがゴブリンデーモンを観察していると、デーモンは右手を真っすぐ伸ばした。

 なんの合図だろうか?

 リオルが警戒していると右手の周りにふわふわと球体が生まれた。

 バチバチと黒い雷を内包した球体からは鳥肌が立つほどの魔力を感じる。


(ちょっと不味いかも!!)


 直感で危険を察知したリオルは走り出す。

 リオルが居た場所に球体が飛んだ。

 ズドン!!

 球体は地面に接すると爆散。カラカラと遺跡の破片をまき散らした。


(なんか、知らない属性の魔法を使ってるし……さっきの儀式で何を呼び出したわけ!?)


 『ラスト・クエスト』の魔法はいくつかの属性に分けられている。

 風、水、土、火、光の五大元素だ。

 だがデーモンが使っている魔法は、そのどれにも属していない。

 明らかに異質な、未知の属性を操っていた。


(あの球体一つでホブゴブリンの攻撃より強い。ちょっと、インフレを感じちゃうかも!)


 ズドドドドドド!!!!!!

 リオルを追いかけるように球体が飛ぶ。

 雨霰のように迫りくる球体を、リオルは反射神経だけを頼りに避けていく。


 一つでも当たれば即死。

 別にリオルは死んでも死なないが、再生するまで足止めされるのはマズい。

 死なない奴を無力化する方法なんて無数にある。

 再生するまえに生き埋めにでもされたら実質ゲームオーバーだ。


(このまま逃げ回っても勝ち目はない。動きが読めないのはリスクが高いけど、ここは一気に近づいて近接戦に持ち込むべきかな)


 リオルはぐるりと方向転換してデーモンに向かって走る。

 球体の弾幕はさらに苛烈となった。

 しかし、リオルは隙間を縫うように弾幕をすり抜けてデーモンへと迫る。


「雜ウ謗サ縺上↑縲ゆココ縺ョ蟄舌h」

「ごめん。何言ってるか分かんないや」


 デーモンがノイズのような音を響かせた。

 なにか喋ったようだが、意味は分からない。

 リオルは言葉の代わりに剣で返す。


 ガガガガガガ!!

 ドリルでコンクリートを砕くような音が鳴り響く。

 リオルの剣とデーモンの手刀が激しく激突を繰り返す。


 ここに来てリオルの剣技は進化していた。

 魔力の流れが最適化される。

 踏み込み、振り下ろし、魔力の爆発による刃の推進。

 その全てを恐ろしく効率的に繰り返す。十歳の少年とは思えない精度で魔力を操り、強力な剣戟を繰り出す。


(……このままじゃ勝てない)


 それでもデーモンには届かない。

 全ての攻撃は手刀によって弾かれる。

 むしろリオルの体には何本もの赤い線が走っていた。デーモンの攻撃をさばききれていない。

 このままでは、どこかで攻撃を防げなくなる。


 ガキン!!

 先に限界を迎えたのは、リオルの剣だった。折れた刃が宙に舞う。

 ザン!!

 身を守る物が無くなったリオルを手刀が襲った。肩から腕が切り裂かれ鮮血がほとばしる。


 利き腕を失えば戦うことはできない。

 最初の奇襲で死ななかったリオルを見て、デーモンは攻め方を変えたのだろう。

 リオルの命では無く、戦うための武器や腕を狙っていたのだ。


 もっとも、リオルには読まれていたのだが。

 ドス!!

 リオルの胸が貫かれ血が流れた。

 自分自身の手でリオルがナイフを突き刺していた。


「縺ェ縺ォ繧偵@縺ヲ縺?k!?」

「これで二回目。もう死にたくないなぁ」


 切り裂かれたリオルの腕が、飛び散った血が、時間を巻き戻す様にリオルへと帰る。

 何事も無かったように腕がくっついた。

 その光景にはデーモンも驚くらしい。化け物でも見るように瞳を震わせていた。


 デーモンが恐れるように手刀を振るう。

 しかし、リオルは()()()()()()()()()ようにぬるりと避けた。

 そのままごろりと床を転がって、床に落ちていた剣を拾う。

 ホブゴブリンが使っていたミスリル製の剣だ。


「……なるほど。仕組みが分かると呆れちゃうほど簡単なトリックだったんだね」


 リオルはデーモンに剣を振るう。

 手刀でガードされ、カウンターのようにデーモンは腕を振るった。

 しかし、またしても攻撃はリオルに当たらない。ゆらりと最低限の動きで避ける。


「やっと、キミの攻撃が避けられるようになったよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ