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交渉

 振り下ろせっ!


 モニカの願いもむなしく場の空気は瞬く間に静まって行き、皇帝は玉座へと向かってしまう。ここまでか。


 皇帝はしばし玉座を見据えた後、その場で振り返り、立ったままオークジェネラルへと声をかけた。まさか尻が汚れるのを嫌がったのだろうか。モニカは改めてこの奇妙なオークをまじまじと観察する。


 全裸にふんどし一丁と、まさに蛮族的な姿ではあった。しかし、よくよく見ればそのふんどしは多少土埃に汚れているものの、艶やかな光沢ときめの細かさが見て取れ、高級品である事が遠目にもわかる。


 確かに、このふんどしで血まみれの玉座に腰を下ろすのは嫌だろう。つまりこのオークには美意識と言うものがあるのだ。ならばその価値観を探りながら交渉するしかない。


 モニカは皇帝とオークジェネラルのやり取りに聞き耳を立てる。


     ◆◆◆◆◆


 オークジェネラルが片膝をついたままの姿勢でナナシに奏上する。


「皇帝陛下、我らの数々の非礼どうかお許しください。われら一同、今後は陛下に心より忠誠を誓います」


 これを聞いてナナシは困ってしまった。オークの群れの面倒を見るなど冗談ではない。


 本来ならば自分の面倒を部下のオークに見させるものだろうが、実際にはアレをするなコレをするなアレはこうしろコレはこうしろと事細かに指導する必要が出てくるはずだ。放っておけばその辺でさらった女を満面の笑みで献上してくるに違いない。


「……余は臣民を欲しておらぬ。今後人間を襲わぬと誓うならば、どこへなりと去るがよい」


 よっし百点満点。ナナシはこの返しを自画自賛する。


「皇帝陛下、我らは略奪以外の生き方を知りませぬ。どうかこの地にてお導きを」


 知るか! ナナシは叫びそうになるのをグッと堪える。

 蛮族の意識改革は皇帝の仕事だろうか。皇帝がこうせよと言えば苦労すべきは下々であって皇帝ではないのでは。などととりとめもない思考がぐるぐるとナナシの頭を駆け巡る。


 ついにはいっそ殺すかと思いかけ、急激に思考が冷めた。ナナシは、力があるというのは恐ろしいと改めて感じる。


 やがて沈黙に耐えかねたか、オークジェネラルが再び口を開く。


「皇帝陛下、なにとぞ我らにお慈悲を」


 ナナシはその言葉にふと違和感を覚えた。オークキングでさえある程度乱暴な口調だったのに、このオークジェネラルはやけに物腰が丁寧である。ナナシはあまり意識せず使っていたが、丁寧な言葉はオークの言語では古い言葉であり、今では理解できないオークもいるくらいなのだ。


 そしてその装備。この群れはどう見ても略奪品ではない、上位種の巨大なオーク用に作られた鎧や武器を装備している。オークが自分たちで装備を作るだろうか。しかも手元にあるこの恐るべき切れ味の剣を。


 疑問があるなら聞いてみればよい。ナナシはオークジェネラルに問う。


「略奪しか知らぬと申したか。ならばその統一された装備やこの剣はどこで手に入れた」

「それは……」


 オークジェネラルが言いよどむ。


「それがそなたらの忠誠か。余が問うておるのだ。答えよ」


 ナナシの言葉にオークジェネラルは意を決し口を開く。


「皇帝陛下、これからお話しする内容で、もし陛下の御心にかなわぬ事があっても、どうか私めの首ひとつでご容赦願います」

「よい。そなたらにいかなる(とが)があろうとも、罰はそなたの首のみにとどめると約束しよう」


 それを聞いてオークジェネラルは幾分安堵したした表情になり、事の経緯を話し始めた。


「それでは……まず御身のお持ちになっている剣でございますが、魔王エンドローザー様よりゴウガンが賜わった剣にて、号を鬼切玉宿と申します。また我らの装備一式も魔王エンドローザー様の魔王軍に所属していた折に支給されたものでございます」


「では、そなたらは魔王の配下であるか」

「以前は魔王軍に所属しておりましたが、魔王様より全軍へ略奪行為の禁止が言い渡された際にゴウガンがその方針に反発し、結果として我らは魔王軍から除名され魔王領より追放される事となりました」


「装備の返還は求められなかったと」

「魔王様は寛大なお方で、一度下賜したものを返せなどとは言わぬと仰られ、さらに道中の食糧や戦犀(ギフル)も軍で使っていたものをそのまま持っていく事をお許しくださいました」

「ふむ、魔王エンドローザーとやら、中々懐の深い人物のようであるな」


 ナナシはそう評したものの、内心では問題児を気軽に放逐するんじゃない、周りに迷惑だろうと憤っていた。魔王にすら逆らうくらい筋金入りの略奪文化の一団に、今後人間を襲うなと言っても無理がある。


 それでも、この群れを後は知らぬと放り出せばやっている事は魔王と同じ。またどこで人々に被害が出るかも知れない。ナナシはいざとなれば本当にこのオークの集団を皆殺しにする必要があるのかと憂鬱になりながら問いかけた。


「魔王の命令を聞かず追放されたならば、余が人間を襲うなと命令しても聞けぬという事か」


 オークジェネラルはさらに深く頭を垂れ、答える。


「我らオークは力あるものに従います。魔王様にゴウガンが逆らった時、魔王様はゴウガンを許すべきではありませんでした。力で無理矢理にでも従わせるか、見せしめに殺すべきでした。そうすれば我らは魔王様の命令に従ったでしょう」


 オークジェネラルは少しだけ目線を上げ、未だ横たわるオークキングの下半身を見た。


「皇帝陛下は力をお示しになりました。もはや我らは皇帝陛下のご命令に背くつもりは毛頭ございませぬ。ただ、我らは略奪以外の生き方を知らぬゆえ、その行く道をお示しいただきたいだけなのでございます」

「余に強請(ねだ)るとは不敬である。知らぬならば考えるのがそなたらの役目であろう」


 オークジェネラルはしばし沈黙した後、絞り出すように言った。


「……御意に」

「余の命令に従うか」

「従わねば皆殺しにするとその刀が示しておられますゆえ」


 ナナシは言われて気づく。軽く立てただけのつもりだった鬼切玉宿が、石畳に30センチほどめり込んでいる。知らず知らずのうちに力が籠ってしまったのだろう。


 オークジェネラルが再び口を開く。


「皇帝陛下、最後に一つだけ。もし人間と戦争をする事になった場合、それでも我らは人間と戦ってはいけないのでしょうか」


 戦争。確かに戦争となれば戦えるものは駆り出されるだろう。そこで戦わず死ねというのはさすがに理不尽であるとナナシは考える。そして、その言葉に含まれた意味に気づく。


「魔王の元へ戻るか」

「我らが略奪以外の生き方を学ぶならば、他に道は無いかと存じます」


 魔王軍と人間の戦争。もし起きれば自分はどちらにつく事になるのか。ナナシは飛んで逃げるかなどと益体もない考えをもてあそびながら、オークジェネラルに告げる。


「では、戦争や正式な戦いを除いて、人間を襲う事を禁ず」

「御意。闘争の神グラーコンに誓って、我ら一同は戦争や正式な戦いを除き、人間を襲いませぬ」


 こうして血と死体に塗れた神殿の廃墟において恐るべき荘厳さの宣誓が行われた。


     ◆◆◆◆◆


「なんだありゃ、どっからどう見ても完全に混沌の儀式じゃねーか。邪神かなんか降りてこねえだろうな。勘弁してくれまったくよぉ」


 キーラが宣誓をのぞき見しながらぼやく。


「これは絵になるねえ~いいよいいよ~」


 隣でレジオナがポケットから取り出した録画用魔道具でその場面を記録している。


 そんなふたりをよそに、モニカは思考に没頭していた。今の一連のやり取りには多くの情報が含まれている。一刻も早く『知識の座』にまとめ上げ『虚空録』に接続せねばならない。


 そもそもこのオークの集団は最初から異常だった。統一された装備もそうだが、普通のオークが1体もいなかったのだ。

 全てウォリアー以上の上位種で構成された群れなど自然界では存在しない。つまり、この群れは選抜された軍隊であり、当然の事ながら魔王の配下だと推測していた。


 当代の魔王はほんの数年で魔族をまとめ上げ、強大な魔王軍を編成していると報告が上がっている。そして、反比例するように人間との小競り合いは沈静化しているのだ。近々大規模な攻勢が行われる事は必至であろうと誰もが予想していた。


 そんな魔王が、たかが略奪をするなという命令に背いた程度でこれほどの戦力を放逐する、しかも装備や物資を与えたままで。それは絶対にありえない。このオークジェネラルは気付いてないかもしれないが、放逐も含めて魔王の戦略の一部のはずである。


 それでも、運用次第では王都すら攻め落とせるであろうこの戦力を使い捨てに出来るとなると、現在の魔王軍がどれほどの勢力になっているのか想像もつかない。


 しかもこのオークの軍団を壊滅させたのは、結局のところそこで皇帝(ヅラ)をしている超巨大なオークなのだ。人類ですらない。


 と、そこまで思いモニカは思考を訂正する。今では研究も進み、オークも大きなくくりでは人類とみなされている。分類としては亜人に属し、オーガやゴブリンもそこに含まれる。

 人間と限定した場合含まれるのはエルフ、ドワーフ、ヒューマン、ティビ、マーマンの5種族のみであり、獣人は亜人に分類される。


 下半身がほぼ魚であるマーマンが人間とされるのは、海洋において一大勢力を誇るためである。その一方で、半魚人(サハギン)は亜人である。見た目か。見た目なのか。


 ずれ始めた思考を軌道修正し、モニカは思索を続ける。このままではオークジェネラルが生きたまま魔王軍に復帰する可能性が高い。

 オークキングには及ばぬものの、特級冒険者数人程度では歯が立たなかった相手である。阻止したいのは山々だが、すでに皇帝はオークジェネラルを行かせるつもりのようだ。


 できる事ならオークジェネラルの首をもらっておいて欲しかったが、あれだけ簡単にオークどもを殺していたのに突然寛容さを見せるとかどういうことなのか。ついでに殺してくれればいいのに。今からでも。さあ。


 私怨も交じる思考の渦に囚われつつあったモニカは、その横で動き出したキーラに気づくのが一瞬遅れてしまう。あっと思った時には、すでにキーラは皇帝の前に進み出ていた。


     ◆◆◆◆◆


 宣誓を終えたオークたちは出立の準備に取り掛かった。

 ナナシはオークたちが物資やギフル、荷馬車などを半分持っていく事を許可した。もう半分は虜囚の女たちを街へ送るために使うつもりである。


 そこへ、石柱と壁の陰から人影が歩み出た。引き締まった褐色の肌に銀の髪を腰まで伸ばした身長197センチの女性、“銀剣”キーラである。


 キーラはナナシの前に跪くとオーク語で単刀直入に切り出す。


「皇帝陛下、あたいは特級冒険者、“銀剣”キーラってもんだ。そこのオークジェネラルと決闘したい」


 突然の申し出に、周囲のオークが騒めいた。キーラに少し遅れて、総勢40名近い女性たちが現れる。


 移動しながら、モニカは上級冒険者の僧侶にささやく。


「なぜこちらへ移動を? まだ寝所にいた方が安全だったかも」

「それが、レジオナが来てもう大丈夫だからこちらに来いと」


 モニカは前を歩くレジオナを見る。モニカが寝所から戻った後レジオナはずっと一緒にいたはず。モニカの視線に気付いたか、レジオナは肩越しにモニカを見ると、舌をちろりと出しウィンクした。


 モニカは小さく嘆息する。レジオナに説明する気が無いのなら聞いても無駄だろう。いちいち驚いていても仕方がない。


 いっぽう、ナナシは急な展開に戸惑っていた。

 決闘したいという事は、要は仇討ちという事だろう。しかしこの女性ではオークジェネラルに対し万にひとつの勝ち目もない。強い事は強いのだろうが、オークジェネラルの足元にも及ぶまい。


 ナナシはキーラのたどたどしいオーク語に、古代オーク語は難しいだろうと考え言葉づかいを砕けたものにする。案外こちらの方がナナシにとっては難しかった。


「キーラとやら、お前死にたいのか? 死にたいだけなら決闘はダメだ」


 キーラは不敬にもナナシの目を見据え答える。


「戦うからには死ぬのはしょうがねえ。だけど死んでもそこのオークジェネラルに1発ぶち込まねえと、殺された仲間に顔向けできねえんだよ」


 たったひと太刀のために死んでもいい。ナナシはキーラの本気の目に、この世界はこういう世界なのだという思いを新たにする。断ればこの女性はどうするだろう。オークの後を追い戦いを挑むだろうか。


 ナナシが逡巡するうちに、キーラの横にもうひとり、メガネ姿の美女が跪く。豊満な胸がたわわに揺れる。


「皇帝陛下、私は特級冒険者モニカと申します。この度は我ら虜囚をお救い下さり、まことにありがとうございます。我ら一同心より感謝申し上げます」


 モニカはこれまでの展開から、皇帝が虜囚を救ったという事を既成事実として、オークを含めたこの場全員の共通認識にするつもりであった。

 皇帝はどうやら支配欲も希薄な様子である。女を欲したとしても数名で足りるだろう。自分、生きていればキーラ、それにレジオナ。この3人で納得してもらう。


 モニカの心にレジオナの「モニカちんヒドス! 勝手に勘定に入れないで欲しいんですけど~」という声が聞こえたような気がしたが、知識の女神の信者でもないレジオナの声が自分に繋がるはずもなしと無視を決める。


「どうか、決闘の許可を戴きたく存じます。キーラの意思は我ら虜囚の総意であります」


 モニカはキーラの決闘を後押しする事にした。どちらにせよ、この愛すべきバカはこのまま助かる事を良しとしないだろう。虜囚となった冒険者たちの心中も似たようなものだ。いざ助かるとなれば今までの悔しさが込み上げてくる。


 実際、オークどもの死体で埋まるこの場の惨状を見た女たちの大半は、笑みを浮かべたのだ。ざまあみろ、と。感極まり泣いている者もいた。当然その涙は死んでいった仲間たちへのものである。


 ナナシは虜囚の総意とまで言われ、決闘自体は許可する事に決めた。命の安いこの世界で、その命をどう使うかくらいは本人の希望を聞いてやりたい。


「わかった、決闘は許す。しかし、そいつじゃ1発入れるのも無理だろう。無駄死にだと思うがいいのか?」

「ああ、かまっ痛たた」


 かまわないと続けようとしたキーラを、いつの間にかその後ろで腰まである銀髪をせっせと結っていたレジオナが、髪を引っ張り物理的に黙らせる。


 その隙をついてモニカが後を継ぐ。


「それについては提案がございます。皇帝陛下も無駄に命を散らす事はお望みでないご様子。実際、オークと人間とでは基本能力に差がありますゆえ、キーラに我ら一同が強化魔法をかける事をお許しいただきたく存じます」


 周りのオークに真意が伝わらないようあえて古代オーク語で話したモニカだったが、オークたちもオークジェネラルと皇帝の会話で耳が慣れたのか、数体が気付いて声を上げた。


「汚ねえぞ! 1対1の決闘に手を貸すなんてよォ!」

「だったらこっちも強化魔法かけまくってやらァ!」ちなみにオークメイジは全員死んでいる。

「決闘なんて言ってねえでやっちまおうぜ!」

「汚い! さすが人間汚い!」


 どさくさまぎれにレジオナまで非難に加わっていた。


 騒然とし始めたその場を収めるため、ナナシは片手をすっと前に掲げた。すると喧騒はぴたりと収まる。この仕草はこちらでも通用するようで、ナナシは内心ホッとした。


 モニカが出してきた条件は人間側としては当然の要求だろう。しかし受ける側は当然不利になる。ナナシはオークジェネラルに話を振った。


「女たちの申し出は聞いたであろう。そなたも希望があるなら申してみよ」


 オークジェネラルは少し考え、ナナシに答える。


「皇帝陛下、それでは2つ条件を加えさせていただきたく存じます」

「述べよ」

「ありがとうございます。ではひとつめの条件として、決闘の結果にかかわらず、この決闘をもって双方の遺恨を解消し、以後正式な戦いで出会うまではお互いに追撃を行わない事を約束していただきたい」


 一瞬、モニカの目が細められるのを見て、オークジェネラルは口角をほんの少しだけ上げる。この中で最も警戒すべき人間はあの女だ。さっきの火球といい、『狂暴化』といい、ひとりで40体ものオークを死に追いやった手際は恐ろしいものがある。


 先ほどの条件も、もしこちらが激高して襲い掛かっていれば、皇帝は女たちを助けようとオークをさらに殺しただろう。あの女にとってみれば条件を飲もうが暴れだそうがどちらでも良かったのだ。


 あえて古代オーク語で話したのは、真っ先に動かしたかったのがオークジェネラルである自分だったという事。攻撃でもしてくれればしめたもの、後は皇帝が始末をつけてくれる。


 モニカの表情の変化を見て、オークジェネラルはあの女が決闘の結果がどうなろうとも、この場にいるオークたちに攻撃を仕掛けるつもりだった事を確信した。


 たかが人間が、そこまでオークを信頼できるものなのか。女たちを救ったのは単なる気まぐれで、次の瞬間には他のオークと共に女たちで楽しみ始めないとも限らないのに。オークジェネラルには、オークを信頼する女というモノが得体のしれない怪物に思えてくる。


「モニカよ、オークジェネラルの条件は正当なものだ。遺恨が解消されないのであれば決闘をする意味もなかろう」

「御意にございます。我ら一同この決闘をもって遺恨を解消し、追撃を行わないと約束いたします」


 モニカは心の中でオークジェネラルに向けてオークのくせにを100回繰り返しながら了承の意を述べた。約束した以上、皇帝は恐らく乱戦に持ち込んだところでオークを皆殺しにはしないだろう。最悪、約束を破った女たちの方が殺される可能性も十分にあり得る。


「ではもうひとつの条件を述べよ」


 ナナシに促され、オークジェネラルが続ける。


「ふたつめの条件として、決闘が始まれば、決着がつくまで何人たりとも手出し無用との確約がいただきたいと存じます」

「決闘ならば当然の要求であるな。モニカよ、決闘が始まるまではいかように強化をするも制限せぬが、始まってしまえば一切手出し無用と約束してもらおう」


 ナナシの言葉に深くうなずくモニカ。


「御意のままに。決闘が始まれば我ら一同一切の手出しをしないと約束いたします」


 内心ではオークジェネラルに向け、知識の女神の加護『思考加速』まで使って1000回オークのくせにを繰り返す。

 キーラが危機に陥れば、万にひとつくらいは皇帝が手を出してしまう可能性があった。オークジェネラルはこちらを牽制すると見せて、実際には皇帝を縛ったのだ。オークのくせに。


 ナナシは一同を見回すと、平易なオーク語で告げる。


「オークも決闘が始まったら手出しは許さん。女たちの飲んだ条件はオークも守ってもらう。では両方とも準備を始めろ!」

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