楽園
煌女ルイシーナの葬儀は身内だけで行った。
仮面を外してしまえばルイシーナは煌女ではない。水路に浮かべたゴンドラにルイシーナを寝かせても、彼女が煌女だと気づく者はいなかった。
白いゴンドラに、眠るように目を閉じたルイシーナが寝ている。
隣にはベルナルドも寝そべっていた。
波のおかげでゆらゆら揺れるゴンドラは、他人のために奔走し続けた二人に用意された安息のゆりかごのようだった。
カルロス、クロエ、そしてアデライアが順に色とりどりのアマポーラの花を献花する。次いで侍従たちが。モニカは「どうかお幸せに」とそっと声をかけて。
それから、革命軍の同志たちが花を添えた。エウリコをはじめとしたベルナルドやルイシーナと直接面会したことのある同志たちが、別れを惜しむ。二人の身体は花に埋め尽くされ、そうして最後に、ガブリエラが赤いアマポーラの花束をルイシーナの手元に置いた。
「あんたの意志はあたしが継ぐよ」
ルイシーナがしていた仮面を己の顔につけながら、ガブリエラは宣言した。
これが最後だと認めたカルロスとクロエがゴンドラを押した。
ゴンドラは滑るように進み、ゆっくり、ゆっくりと、川を下っていった。
しばらくすると、白いゴンドラから忍ぶような笑い声が上がった。
「……ははは。死んでしまったねルイシーナ」
「ふふふ。貴方もよベルナルド。ちょっと派手にやりすぎたかしら? 協力してくれた革命軍のみなさんにもお礼を言いそびれてしまっているわ」
「礼は別の方法で返せば良いさ。僕らの旅は始まったばかりだからね」
そよ風のような笑い声が揺蕩う。
水を割く音が静かに響いている。
ゴンドラは流れ流れて楽園へ辿り着く。




