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煌女革命  作者: あまがみ


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大事な人

 屋敷が燃えたことに対して、カルロスとクロエはルイシーナに説明を求めたが、ルイシーナがアデライアが訪ねて来たことを告げるとそれ以上は何も聞かなくなった。もちろんアデライアを探そうともしなかった。火事にはアデライアがかかわっているかもしれなかったけれど、ルイシーナも二人のようにアデライアについては何も触れないことにした。


 焼失で財産の大半を失ったトーレス家を憐れむ者は多かった。けれど憐れみを口に出すだけで、実際に手を差し伸べてくれたのはベルナルドたち革命軍であった。


 エウリコが何十人も引き連れてやってくると、カルロスやクロエは困惑した。エウリコは困惑するカルロスやクロエを「煌女様に助けられた恩返しをしたい」ともっともらしいことを言って丸め込み、堂々とトーレス家の門をくぐった。


 革命軍はカルロス、クロエ、ルイシーナ、そして侍従の全員を介抱してくれた。それだけでなく、避難先として家を貸してくれ、焼け落ちた屋敷を片付けるのにも手を貸してくれた。


 こういう時に頼りになるのはカルロスである。カルロスはエウリコやベルナルドと共に人を引き連れ、作業を滞らせることなく進めていった。


 一方、頭に怪我をしたうえ煙をたくさん吸い込んだルイシーナは安静にしているように言われたため、木の下に設けられた椅子に座って皆が屋敷を片付けるのをぼんやり眺めていた。


「ごきげんようルイシーナ様。お加減いかがでしょうか?」


 ズボン姿にも関わらず、スカートを摘み上げる仕草をして少女が礼をした。


「ど? カンペキ?」


 上げた顔は快活な笑顔だった。健康的に焼けた肌に黒々とした短い髪。背格好はルイシーナとよく似ている。エウリコのタヴェルナで出会った少女、ガブリエラだ。


「とても綺麗よ」


 ルイシーナが褒めるとガブリエラは至極嬉しそうな顔をした。


「やった。クロエさんに習ったかいがあった」


「いつの間に挨拶の仕方を習ったの?」


「作業の合間とか飯――食事の時とかに少しずつ。他にも食器の使い方とか、歩き方とか、言葉も勉強中だよ」


 いつの間にかクロエはガブリエラの礼儀作法の先生になっていたらしい。そういえば一緒に食事をした際のガブリエラはタヴェルナで出会った時とは違って、きちんと座って丁寧に食器を使っていた。


「どうして習っているの?」


「あんた――あなたみたいになりたいと思ったから。貴族は嫌いだし、礼儀作法なんてって思っていたから恥ずかしいんだけど。なんかあなたを見ていたら強そうに見えてさ」


 ガブリエラは頬を掻いて照れくさそうな顔をした。


 ルイシーナにはガブリエラの言う「強そう」がいまいち分からなかったけれど、褒められていることは分かったので素直にお礼を言った。するとガブリエラはどうしてか大きな口を開けて「お礼を言われるなんて!」とおかしそうに笑った。


 ガブリエラの笑顔は向日葵のように輝いていた。礼儀作法を完璧に身に付けたとしても、こういうところは変わらないでいてほしい。ガブリエラ自身の魅力を損なわないでほしかった。


 ルイシーナがそれを伝えようとすると、ガブリエラはパッと表情を変えた。恐ろしい顔をしてルイシーナの後ろを睨みつけるのだ。


 振り返ると軽武装をした兵士が立っていた。兵士は一度礼をしてからルイシーナに手紙を渡して去っていった。


 差出人の名前はない。けれど封筒の色は臙脂で、蝋印は皇家のものだった。


 ルイシーナはその場で封筒を開けて手紙を読んだ。ガブリエラが隣から覗き込んでくる。


 手紙には今回トーレス家に起こった不幸な事故を労う内容と、近いうちに両親を交えて会えないだろうかという申し出が書かれていた。


「なんかこれ怪しくない? ルイシーナ様、絶対こいつに会うのやめた方がいいよ」


 眉を寄せるガブリエラ。


 ルイシーナは怪しいとは思わなかったけれど、断るつもりだった。アデライアの話が気になっていたからだ。アデライアではなくルイシーナを三番目の妻になんて突拍子もないことが本当に進められようとしているのなら、接触は避けた方が良い。


 アデライアが思い描いた人生が崩れてしまうのはルイシーナにとっても不本意だった。


 今回のことがあっても、ルイシーナはアデライアを愛していた。少なくともルイシーナは殴られたことを咎めるつもりはなく、もしアデライアが火をつけたのだとしても悲しみはすれ怒ることはないだろうと思えた。おそらくカルロスとクロエも同じ気持ちだ。


 しかし。


『君の大事な人を預かっている。助けられるのは君だけだ』


 二枚目の手紙に書かれたたった一行の文字を読んで、ルイシーナは考えを改めた。


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