目覚め
それから数日ルイシーナは病人のようにベッドの上で過ごした。クロエはほぼ付きっきりで面倒を看てくれ、カルロスは何度もバツの悪そうな顔をして様子を見に来たが、バレンティアとドロテオは気配すら感じさせなかった。だからルイシーナはドロテオがもう己のことを諦めたのだと思っていた。彼がカルロスに痛めつけられるのを見て怖気づき、あの日のことはひとときの気の迷いだったと悔い改めたのだと思ったのだ。
しかし、一週間が経って混乱もすっかり収まった頃にやって来たドロテオは、背筋がぞっとするような目をしていた。
「もう、邪魔者はいなくなったね」
ベッドに座り、ルイシーナの腰を抱き寄せて囁く男には、可愛い弟の影さえない。下卑た男の目というのはこういうものをいうのかと、ルイシーナは妙に冷静な頭でドロテオの目を見ていた。
「これで分かっただろう。この家は貴方にはどうにもできないんだ。いずれここは完全に僕の物になる。そうなればクロエを追い出すのは簡単だよ。貴方自身、将来が不安だろう? 貴方が光を失ったらどうなると思う? 光ることしできない貴方が今更何処かで働くなんて不可能だ。通常の女が結婚している歳を過ぎているから、貰い手もいないだろう。ずっと家にいることになるかもしれないね。そうなったら貴方の面倒を見るのは僕だ。貴方を救えるのは僕しかいないんだよ。だから、分かるだろう? これからの態度をよく考えておくようにね」
幸いドロテオはベルナルドがいなくなって余裕があると思っているのか、この日はこれだけで去ってくれた。
人というものはそう易々と変わらないもののようだ。ドロテオはきっと、ルイシーナが変わらなければ変わらないのだろう。だったらルイシーナが変わり、そしてドロテオに分からせるしかなかった。
ルイシーナはようやっと目が覚めた気分になり、ベッドを抜け出して二本の足を床につけた。




