表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
煌女革命  作者: あまがみ
3/56

光と穢 2

「きゃぁぁぁぁ!」


 声を取り戻したという女の子とその母親を労っていると、悲鳴が耳を劈いた。


 ルイシーナは急いで立ち上がって眼下を確認した。


 身廊の中心部で仮面を被った人々が輪になっていた。真ん中には麻の布を頭から被った人物が蹲っている。


「煌……女、様! 我々にも【光】を……!」


 蹲っていた人物が顔を上げた。


 痩せこけて骨と皮だけになった老爺だった。老爺は真っ赤に血走った眼でルイシーナを見上げていた。けれど段上にいるルイシーナからは麻布を被った人物が老爺であると分かっても、どんな顔をしているのかも、か細い声で何を言ったのかも分からなかった。


 ただ、老爺が何かを口から吐いたところは見えた。


「うわぁぁぁ! 【穢】だ! 穢れた人間がいる!」


「どうしてこんなところにいるの!?」


「近寄るな! 【穢】をうつされるぞ!」


 周りの人間が次々に叫んで老爺から飛び退った。何人かが慌てて集会堂から逃げていく。


 老爺は皆が退いたことで開いた身廊を、ゆっくり、ルイシーナ目指して歩いてきた。


 【光】には【穢】を直すという俗説がある。もしかしたら老爺はそれを信じてルイシーナの【光】を求めてやって来たのかもしれなかった。


 ルイシーナは思わずドレスをたくし上げて階段を降りて行こうとした。逃げるためではない。今にも倒れそうな老爺のところまで行って、【穢】を直すことはできなくとも他の人々と同じように労ってやれないかと思ったのだ。


 しかし。


「何をしているの!? 早くそいつを外へ出しなさい!」


 騒ぎを聞きつけてやってきたアデライアが中央部で叫んだ。


 たちまち警備の者が現れ、長い木の棒で老爺を突いて追い出した。「【塵捨て場】に捨てろ!」という声も聞こえて来た。


 【穢】を持った老爺が消えると拍手が起こった。アデライアは称賛を浴びながら優雅に一礼してみせた。


 これは、何なのだ。


 ルイシーナは気分が悪くなって倒れるように椅子に腰かけた。


 異様に見えた。弱った老爺を追い出した者が称賛される世の中が当たり前であって良いのだろうか。【穢】を持った人間を排除することが正しいのだろうか。これを享受する己は――【光】は善なのだろうか。


「きゃぁぁぁぁ!」


 声を取り戻したという女の子とその母親を労っていると、悲鳴が耳を劈いた。


 ルイシーナは急いで立ち上がって眼下を確認した。


 身廊の中心部で仮面を被った人々が輪になっていた。真ん中には麻の布を頭から被った人物が蹲っている。


「煌……女、様! 我々にも【光】を……!」


 蹲っていた人物が顔を上げた。


 痩せこけて骨と皮だけになった老爺だった。老爺は真っ赤に血走った眼でルイシーナを見上げていた。けれど段上にいるルイシーナからは麻布を被った人物が老爺であると分かっても、どんな顔をしているのかも、か細い声で何を言ったのかも分からなかった。


 ただ、老爺が何かを口から吐いたところは見えた。


「うわぁぁぁ! 【穢】だ! 穢れた人間がいる!」


「どうしてこんなところにいるの!?」


「近寄るな! 【穢】をうつされるぞ!」


 周りの人間が次々に叫んで老爺から飛び退った。何人かが慌てて集会堂から逃げていく。


 老爺は皆が退いたことで開いた身廊を、ゆっくり、ルイシーナ目指して歩いてきた。


 【光】には【穢】を直すという俗説がある。もしかしたら老爺はそれを信じてルイシーナの【光】を求めてやって来たのかもしれなかった。


 ルイシーナは思わずドレスをたくし上げて階段を降りて行こうとした。逃げるためではない。今にも倒れそうな老爺のところまで行って、【穢】を直すことはできなくとも他の人々と同じように労ってやれないかと思ったのだ。


 しかし。


「何をしているの!? 早くそいつを外へ出しなさい!」


 騒ぎを聞きつけてやってきたアデライアが中央部で叫んだ。


 たちまち警備の者が現れ、長い木の棒で老爺を突いて追い出した。「【塵捨て場】に捨てろ!」という声も聞こえて来た。


 【穢】を持った老爺が消えると拍手が起こった。アデライアは称賛を浴びながら優雅に一礼してみせた。


 これは、何なのだ。


 ルイシーナは気分が悪くなって倒れるように椅子に腰かけた。


 異様に見えた。弱った老爺を追い出した者が称賛される世の中が当たり前であって良いのだろうか。【穢】を持った人間を排除することが正しいのだろうか。これを享受する己は――【光】は善なのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ