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煌女革命  作者: あまがみ


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悪いこと

 制限された生活と孤独がこれほど苦しいとは思わなかった。


 外の世界と断絶されて十六日経った。


 会話をするのは身の回りの世話をしにやってくるモニカだけ。家族とも、ベルナルドとも、あれから一言も話していない。


 初めはいつものように過ごしていたけれど一週間で限界が来た。ルイシーナは部屋の中で電気もつけずに虚空を見て過ごすようになり、時々どうしようもなくなってシーツや枕を投げて暴れまわった。そうして疲れて眠ると虚無感に襲われ、また虚空を見つめ続けてしまうのだった。


 誰とも会話せず籠って過ごすことがこれほど人格に影響を与えるなんて思ってもみなかった。こうなってみなければ、己の中に物を投げて暴れまわるような攻撃性があることに気づかなかっただろう。孤独が涙も出ないくらい辛いということも。


 ルイシーナの唯一の楽しみは世話をしにやってくるモニカと過ごす時間だった。モニカはルイシーナが暴れまわった後でぐちゃぐちゃになった部屋を文句一つ言わずに片付けてくれ、今日の天気や献立、それから屋敷で何があったかを話してくれた。


 できる限りモニカには長く滞在して欲しかったから、普段はしない私的な話にも踏み込んだ。


 モニカは懐かしむように家族のことを話し、恥ずかしそうに大切な人のことを話してくれた。大切な人のことを話す時は決まって首から下げた四芒星のネックレスをいじりながら、頬を赤らめる。その様子が可愛らしくて、ルイシーナはよくモニカの大事な人の話を聞いた。意志が強くて頼りがいのある人で、多くの人に慕われているのだそうだ。ルイシーナはふとその人物像に該当する男がいることに気づき、恐る恐る聞いてみた。その男はベルナルドかと。するとモニカはぶんぶん首を振り、大げさに手まで振って否定した。


「違いますよ! あの方には似ても似つかない強面で粗暴な人です!」


 思わず安堵してしまったことに気づかれないよう、ルイシーナは微笑んで返した。


「そうなの? 強面で粗暴でも、貴方にとっては可愛らしくて男らしい良い人なのでしょう?」


 モニカは顔を真っ赤にしてネックレスをいじった。分かりやすい無言の肯定である。


 ルイシーナは眩しくて目を細めた。


「結婚、していないのよね?」


 モニカから結婚しているという話を聞いたことはない。案の定モニカは首を縦に振った。


「しないの?」


「してくれないんです。自分と一緒になったら私が不幸になるから嫌だって聞く耳を持たなくて」


「優しいのね。でもそんなの、どうしてその方が決められるのでしょうね。モニカが幸か不幸かはモニカが決めることなのに。他人がどうこう言ったって、本人が幸せなら幸せで、不幸なら不幸というものでしょう」


「おっしゃる通りですお嬢様! あの人になら喜んで何処まででもついて行けるし、あの人となら絶対私は幸せになれるのに、あの人は否定するんです! もう嫌になっちゃいますよ! 男って肝心な時に臆病なんだから!」


 珍しく興奮して声を荒げるモニカは新鮮だった。真面目で心優しいモニカにこれだけ熱を持たせ、これだけのことを言わせる相手に会ってみたいと思った。


「それだけ素敵な方なら是非一緒になりたいものね」


「えぇ、本当に。他の女には渡したくないです。だから既成事実でも作ってやろうかと」


「既成事実?」


「子どもを授かったら絶対結婚してくれるはずなんです」


 なんと大胆なことを言うのだろうとルイシーナは口を押さえた。


「で、でもそんなの、相手にその気がないといけないでしょう?」


「あの手この手でその気にさせるんです。お酒を飲ませて襲っても良いと思っています。彼、お酒弱いから」


 なんてことを言うのだ。


「悪いことよそれは」


「分かっています。でも良い子のままじゃ彼は私の物にならないから、ちょっとくらい悪い子にならないといけないんですよ。もちろん本当に襲おうとは……。それくらい本気だって見せつけてやるってことです」


 完全に否定しなかったところが怪しいが、モニカが本気だということは充分伝わった。ルイシーナが応援すると、モニカは「がんばります」と拳を握って意気込んだ。


 モニカが去るとルイシーナはベルナルドのことを考えた。


 バルコニーから彼を探しても姿が無く、監禁されてから一度も姿を見ていない。というより、モニカ以外誰の姿も見ていなかった。カルロスによって世話係以外の接近を禁じられているからだとモニカは言った。間接的に関わることや身の回りの世話を越えた余計なことをするのも禁止されており、巡回しているクロエが監視役になっているので無視することができないそうだ。


 胸が焼かれたような寂しさを感じたこともあった。けれど屋敷であったことを報告してくれるモニカが決まって彼のことも話してくれるので、それだけで苦しさがだいぶましになるのだった。彼が健やかであるならそれでいい。自分が関わっていなくたっていいとルイシーナは本気で思っていた。人づてに聞くのは監視しているようで憚られたが、それくらいは許してほしかった。


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