最期に団子を食べられるなら毒餌も悪くない
ヒトビトは、わたしを見ると恐怖に顔を歪め、家に逃げ込んだ。
歴史の教科書、あるいは、昔話やファンタジーの挿し絵やアニメで見るような、みすぼらしい家。
きっと火器など、備えてはいないだろう。
受け入れられることも、殺されることもないと察したわたしは、とぼとぼと人里をあとにしようとして、それを見付けた。
お墓があるでも、地蔵や道祖神があるでもない道端に、不自然に置かれた皿。皿に乗る、団子が四つ。
毒餌だ。
直感的に、そう気付いた。それは前世の、知識があったお陰かもしれない。
力で敵わない野性動物を、彼らは罠や毒餌で殺すのだ。
好都合だと、思った。
もう、生きるのに嫌気がさしていた。
毒で死ぬのは苦しいかもしれないが、でも、最期に団子を食べられるなら悪くないではないか。
思って、皿に近付き、口を近付けた、そのとき。
ひょいっと、持ち上げられた。
えっ?っと思って後ろを確認する間もなく、揺れ動く視界。腹に回る、ヒトらしき腕。
抱えられ、運ばれているのだと予測はついたが、速い。
これはヒトの身体能力だろうかと、思うほどに速いし、軽い。
あっという間に人里を離れ、わたしがいた山も飛び越え、さらに二、三、山を越えた山奥の、高いお山のてっぺんに、大きく立派な屋敷があって、その門中に降ろされた。
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