色褪せない未来で。
「これ描いたの!」
レナは手に持っていた絵をニコラに見せる。
そこにはニコラ、セシリア、レナの三人が仲良く手を繋いで笑っている姿が描かれていた。
ニコラはふっと笑い、少女の柔らかい髪を優しく撫でた。
レナは気持ちよさそうに目を細める。
コンコン。
ノックする音がし、ニコラが返事をしたあとすぐに「失礼します」という言葉と共にドアが開かれた。
部屋に入って来たのはセシリアだった。
「やっぱり、ここにいたのですね。レナ、料理長が探していましたよ」
「えっ?どうして?」
「今日、一緒におやつを作るのではなかったの?」
昨日、料理長がおやつに作ってくれたパンプキンパイがあまりにも美味しかったレナは料理長に野菜のお菓子を一緒に作りたいと強請っていたのだ。
そのことをレナは思い出す。
「わ、わたし、りょうりちょうのところに行ってきます!」
「慌てなくて大丈夫よ」
慌ててその場から出て行くレナにセシリアは声を掛ける。
ニコラ、セシリアの二人は互いの顔を見合せてふっと笑い合った。
「相変わらずそそっかしいな。アイツは」
「でも、そういうところが可愛いのですよ」
セシリアは手にしていたトレーを近くのテーブルの上に置いた。
トレーの上には紅茶、キャロットケーキがあった。
全て彼女の手作りだ。
「旦那様、少し休憩にしませんか?」
「ああ。そうだな」
ニコラはテーブルの近くにあるソファに座った。セシリアは彼の前に紅茶をそっと置く。
「きみも付き合ってくれるだろう?一人では虚しいからな」
「もちろんです」
ニコラの言葉にセシリアは微笑んだ。
彼女はふっと思い出す。
あの時もこんな日だった。
『お前と式を挙げるつもりはない。妻としての役割を果たしてもらえれば、あとは自由にしてもらっても構わない』
ニコラと初めての顔を合わせた時、彼にそう言われて契約結婚を交わした。
あのときは互いの利害の一致での契約結婚。
そこに『愛』なんてものは存在しなかった。
だけど、彼と過ごすうちに彼の心に触れて、惹かれて、いつの間にか愛し、愛される関係へと変わって。
二人は本物の夫婦となった。
人生とは何が起きるか分からない。
だから面白いのかもしれない。
あの時の自分はまさか自分が幸せになれるなんて思わなかった。
ただただ雨風が凌げる場所と実家から抜け出したい一心だったのに。
「セシリア。どうかしたか?」
「いえ、何もありません」
不思議そうに訊ねるニコラにセシリアはソファに座りながら笑って答える。
きっと自分はこの先、未来も目の前の彼のことを変わらず愛していくのだろう。
大事な旦那様がいて。
命よりも大事な娘がいて。
屋敷には大切な使用人の皆がいる。
この宝物のような幸せを毎日大切に、大切に過ごして行こう。
セシリアはそう思ったのだった。
(終)
作者のせあらです。
ここまで読んで下さって有難う御座いました。
ニコラとセシリアのお話はここまでになりますが、本物の夫婦となった二人の物語はこれからも続いていくのだと思います。
最後まで書ききれたのは読者様のお陰です。
本当に有り難う御座います。
実は今新しいお話を準備していますので、もし良かったらこちらも応援して頂けましたら嬉しいです。
本当に有り難う御座いました!




