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新たな風

「もし、きみがニコラと上手くいってなくって、悲しい顔ばかりするようなら僕が奪ってしまおうと思った。だって僕はきみのことをずっと大事に思っていたから。でも…」


グレン様は顔を上げて、ふっと私を見た。

それはとても晴れやかに。


「その必要はなかったみたいだ。僕の弟はきみのことを大事に愛していたから。言葉が少ないのは相変わらずだけどね…」


「でも、そこも含めて私は彼は魅力的だと思います」


ニコラ様は言葉が少ない。

だからこそ誤解されやすい人だ。

だけどそれを補うくらい彼は他人の気持ちを考え、不器用ながら優しいところがある。

私が恋した人はそういう人。


「きみはニコラのことを良く理解しているんだね」

「彼の妻ですから」


グレン様はふっと笑い、そして私に向き直って真剣な顔をして言った。

「弟のこと宜しく頼む」


それは彼が心からニコラ様のことを思い、家族として大事に思っていた誠意の現れなのだと感じた。

血は半分しか繋がっていないと聞いていた。

だけど、それは血の繋がりなんかじゃない。

血よりも心の繋がり、絆の深さなのだと思った。


私はグレン様に小さく微笑む。

自分の精一杯の自分の気持ちも込めて。

「はい。任せて下さい」


青空の下で私と彼は二人微笑み合った。

それはこれからのお互いの未来を思い描きながら…────。


****


「…兄上と話はできたか?」


アルジャーノの屋敷に戻る道中。

帰りの馬車の中で目の前の席に座るニコラ様は私にそう聞いてきた。


「はい。それは充分に」


最後にグレン様とお話が出来て良かった。

まさか彼が昔パーティーで私を助けてくれた男の子だったとは知らなかったが、それでも彼と言葉を交わせたこと、互いに想いを伝えあったこと。

今では本当に良かったのだと思える。


「い、言っておくが俺はきみを兄上に渡すつもりは毛頭ないからな」

「ええ。私はニコラ様の妻ですが?」


ニコラ様の言っている意味が理解できず、キョトンした顔をする。

そんな私に彼は言った。


「~~~き、きみは俺もものだと、そう言ってるんだ!」

「~~~~~!!」


彼の言葉を聞いて思わず私は顔を赤面させてしまう。

まさか彼からこんな言葉を聞けるなんて思ってもみなかった。

良く見るとニコラ様は私から顔を僅かに逸らし、耳を赤くしていた。

きっと彼も私と同じく気恥しさを感じているのかもしれない。


「わ、私が好きな人は…ニコラ様だけです…」


気恥しさを感じながらも私は俯きながら答えてしまう。

微妙に甘い空気を感じながらも私は恥ずかしさを感じる。

そんな中、ニコラ様は呟くように言う。


「悪かった…。変な独占欲を出して…」


私と彼の二人は顔を互いに見合い、ぷっとお互い笑った。



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