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きみと最後の話

翌日の朝。

暖かい陽射しが降り注ぐ中。

玄関の前に停まっている一台の馬車の前に私とニコラ様はいた。


「荷物はこれだけか?」

「ええ。そんなに持って来ていませんでしたので」


私が手に持っていたのは小さなトランクだけ。

本家に来た時と同じ。


「貸してくれ」

「あ、あのニコラ様、自分で持ちます。そんなに重たい物ではありませんし」

「きみは甘えるのが下手だな。こういう時は素直に甘えれば良いんだ」


「ありがとうございます。ではお願いします」

「ん」

彼の不器用な優しさに私は嬉しさを感じ、小さく頷いた。


あれから。

ニコラ様は当主様へとすぐに領地に戻る胸を伝えた。

アルジャーノ夫人はニコラ様に対して怒りを露わにしていたのだが当主様が彼女を黙らせた。

きっと夫人は私と自分の息子であるニコラ様を別れさせようと計画をしていたのかもしれない。

私達が本家にいる間、夫婦の間に溝ができ、または別れることにさえなれば彼女にとっては都合が良かったのだろう。

だが今となっては水の泡だが。


(最後にグレン様とお話がしたかった…)


昨日の夜、私はグレン様と話をする為に彼の部屋に赴いたのだが、彼は不在だった。

私はグレン様の想いに応えられなかった。

だけど本家に来て、いつも私のことを気遣って、話し掛けてくれていた彼に私は救われていた。

せめてお礼を伝えたい。

私の自己満足かもしれないが。


私は顔を上げて、目の前にある馬車に乗り込もうとした。

その時…────。


「待ってくれ!」


振り向くとそこにはグレン様がいた。

急いで来たのだろうか、彼は息切れをして焦ったような顔をしていた。


「大丈夫ですか」

私は慌てて彼に駆け寄り、彼の顔を覗き込む。

心配する私に彼は苦笑を浮かべた。


「ありがとう。やっぱり、きみは優しいね」

「兄上、何か用か?」


いつの間にか私の隣に立つニコラ様にグレン様は軽く笑った。


「そんなに警戒しなくても良いよ。もうセシリア嬢をお前から取ったりしないから」


そして彼は真剣な顔をして言った。

「彼女と少しだけ話がしたいんだ。良いかな?」

「しかし…」


ニコラ様は顔を曇らせる。

そんな彼に私は彼の服を掴んで彼に願い出た。

「私からもお願いします。グレン様と少しだけお話がしたいです。すぐに戻ってきますので」


ニコラ様は困ったような顔をしたあと、ため息をついた。

「仕方ない。わかった」

「ありがとうございます」


「悪いね。ニコラ、彼女を借りるよ」

「長くならないで下さいね」

「わかってる。心配症だな。お前は」


「心配しますよ。俺の妻なのですから…」

ボソッと言うニコラ様に思わず私はぼっと赤くなってしまう。


(凄い破壊力…!好きな人に言われるとここまで違うなんて…!!)


嬉しさと気恥しさがないまぜになってしまう。

そんな私を他所にグレン様は私の手を引く。

「えっ!」

「兄上!」

「これぐらい多めに見てくれよ。セシリア嬢、行こうか」


そう言ってグレン様はその場から私を連れ出した。

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