想い通じ合う
「きみが気にすることはない」
「でも…」
「兄上はきみに自分の気持ちを伝えたはずだ。きみにそんな顔をさせる為じゃない」
「……………」
ニコラ様はふっと優しい表情をして私の手をそっと握った。
「部屋に戻ろう」
私の手を引くように歩き出す彼に私は慌てて言った。
「で、でも当主様達の代わりの料理をはやく料理長に言わないと…」
「料理はほかの者が伝えるから大丈夫だ。セシリア、明日には領地に戻ろう。はやくきみとゆっくりと過ごしたい。ここは疲れるからな…」
彼の言葉を聞いて、私は心から嬉しくなる。
彼も私と同じ気持ちなのだと。
だけど、同時に一つだけ気がかりなことがある。
私は当主様に料理を出した際に当主様は私の料理を数口程度しか口にされていない。
ニコラ様の妻として認めてもらう為には当主様の舌が唸る料理を作らなければならなかった。
それを私は見事に失敗してしまったのだ。
そんな中、ニコラ様は私を連れて領地に帰っても大丈夫なのだろうか…。
私のせいでニコラ様と当主様の関係が悪くならないのだろうか…。
「で、でもニコラ様…」
「きみは俺が突然領地に帰ったら父上と俺との関係が悪くなる。そんなことを考えているんじゃないだろうな?」
彼に図星を刺されてしまい、思わず私はドキッとしてしまう。
「そ、それは…」
「そんな下らないこと考えずとも大丈夫だ。きみは父上に認めてもらえている。俺の妻だと」
「えっ?どうしてですか!私の料理は当主様の口には合わなかったはずなのに…」
「だからだ。きみは、その…無意識だったかもしれないが俺好みの料理を作っていたせいで、味付けも俺好みになっていた。妻が夫の好みを把握できるのは当たり前であって、当たり前じゃない。夫のことを理解している証拠だ。そう父上は言っていた」
「そんなことで…」
驚く私にニコラ様は優しい顔をした。
「きみには大したことではないのかもしれないが、俺はその話を聞いて嬉しくなった。無意識かもしれないが、きみが俺のことを考えて作ってくれていたのだと思って…」
ニコラ様はハッと気づき、気恥しそうに私からすぐに視線を逸らした。
「すまない…。こんな話をして…」
そんな彼に私はニコラ様の手をそっと握って、彼を見つめた。
今私の中にある彼への思いを言葉にする為に。
「私はあなたの為に料理を作っていました。当主様の為に作らなければならないのに…。それほど私はニコラ様や屋敷の皆と過ごすニコラ様の屋敷が好きなのです。ずっと一緒にいたい。そう願ってしまう程に」
突然、急に腕を引き寄せられ、私はいつの間にかニコラ様の腕の中で抱きしめられた。
「明日、帰ろう。俺たちの屋敷に」
彼の言葉に、彼の暖かな腕の中で私は頷くように答えた。
「……はい」




