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手料理と、当主様と。

「父上、彼女は私が妻に選んだ方です。あなた達が決めるわけではない。私が決めることです」


はっきりとした口調でニコラ様は当主様に告げた。

ニコラ様から繋がれた暖かな手から伝わる温度が私の不安をかき消すようだった。


「もちろんだとも。お前の妻はお前が選べば良い。私には何の権利もないからな」

「あなた…!」


当主様の言葉に我慢の限界だった夫人は声を荒らげようとしたが当主様に一瞥されて悔しそうな顔で押し黙る。


「だが、次期アルジャーノ夫人として認めるかは別だ。それだけアルジャーノの家名は由緒正しく、たまは重くあるのだからな」


当主様のお言葉は正しくその通りだ。

王族直々の建設の仕事、商業の仕事を請け負い、反映しているアルジャーノ家。

この国の建物の殆どの建設はアルジャーノ家が行っている。

当主となれば、今まで歴代の当主が引き継いできたものを受け継ぎ、さらに反映の兆しを求められる。

当主の妻も同じだ。

当主を支え、家名と屋敷を護らなければならない。


アルジャーノ夫人は仕事はできるかもしれないけれど、私に嫌がらせをしてくるのは感化できないけれど…。


ニコラ様はアルジャーノ家の次期当主ではない。正直私は家名も利益も興味はない。


ただあるのは彼の妻としてありたい。

それだけだ。


私は顔を上げて、真っ直ぐな目を当主様に向けた。


「もちろんです。今日はただ皆さんに私の料理を食べて欲しい。それで少しでも美味しいと思われたら、それだけで私は満足です」


「そうか」


当主様は私の言葉に短く返す。

今はそれで良い。

最初は当主様にニコラ様の妻として認めてもらわなければならない。

そう思っていたけれど、私が作った料理を食べて美味しいと思って貰えたのなら私は満足だ。


「失礼します」


使用人は私達それぞれの席に料理を置いていく。

キッシュ、ミネストローネ、ステーキ、パン、サラダ。

私が作ったものだ。


「凄いな。どれも美味しそうだね。これはセシリア嬢が全て作ったのか?大変だったではなかったかい?」


料理を見て感心するグレン様に私は笑って答える。


「そのようなことはありません。比較的に作るのは好きですので…」

「では、食べるとしよう」


当主様はフォークを手に取り、皿の上に乗っていたキッシュを一口サイズに切ると、それを口にした。


(ど、どうかしら…?お口に合うと良いのだけれど……)


煩いくらいにどきどきと心臓が鳴る。

緊張しすぎて顔が見れず、思わず私は俯いてしまう。


何度も味見をしたから、きっと問題はないはず……。

ゆっくりと時が流れているのを感じてしまう緊張感からはやく開放されたい。

私は祈るような気持ちでいた。


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