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価値の証明

睨むグレン様にアルジャーノ夫人は小さく鼻を鳴らし、小馬鹿にしたような態度をする。


「私の侍女をそこの小娘が馬鹿にしたから、その処罰を与えているだけよ。まさか、あなた小娘を庇うつもりなの?」


「彼女にはセシリア·アルジャーノという名があります。小娘ではなく、我々アルジャーノ家の一員です。それに彼女が人を虐げるような人間には到底私には思えません。最も…僕と目を合わせようとしない、そこの侍女が私は怪しいと思いますが」


スッと目を細めて冷たい眼差しで私に言い掛かりをつけていた侍女にグレン様は視線を向けた。

侍女はビクッと方を震わせて罰が悪そうな顔をしている。


「あなた…私の意見に逆らおうというのかしら?妾の子供の分際で偉そうに」


アルジャーノ夫人は苛立ちながらグレン様を憎々しげに見やる。

まるで蛇に睨まれた蛙だ。

だがグレン様は怯むことはなく笑顔で言った。


「僕は確かに妾の子ですが父上からアルジャーノ家の後継者に選ばれました。ただの女主人とは違いますし、何より僕に対する侮蔑の言葉は父上の意志に背くことになりますが?聡明なお義母様はご理解されていらっしゃいますよね」


グレン様の言葉にアルジャーノ夫人はギリッと唇を噛んだ。

アルジャーノ夫人はプライドが高い方だと以前ニコラ様から聞いたことがある。

自分か馬鹿にしていた者から反撃され、有利に立たれるのは彼女のプライドを酷く傷つける行為。

きっとそれはグレン様も理解しているのかもしれない。


「お義母様。貴方が彼女に提案されていた件なのですが取りやめさせて頂いても宜しいですね?」


有無を言わさない彼の笑顔にアルジャーノ夫人はただ悔しそうな顔を浮かべるだけ。

そんな中で私は声を上げた。


「待って下さい!」


誰もが私に注目する。

私は胸に手を当てて凛とした表情で告げた。


「私、料理致します」


「ふん。やっぱり自分の罪を認めたのね。ええ、私にはあなたが嘘をついていたことなんて最初から分かっていましたけれどね」


水を得た魚ねようにアルジャーノ夫人はここぞと言わんばかりに私のことを言葉でなじってくる。


「セシリア嬢。きみがそんなことをしなくても良い。どうせ下らない言いがかりだ。相手にするだけ無駄なんだよ」


「グレン様。私のことを思って、助けて下さってありがとうございます。私は何もしていない。それは胸を張って言えます。だけど、ここで自分の力を証明しなければ、きっと同じようなことは何度も起きるかもしれないのです。だったら私は証明したいと思います」


ここでグレン様のご厚意に甘えてしまい、助けてもらうのは簡単だ。

だけど、ここで馬鹿にされたまま。

護られてばかりではずっとこのままだ。


それにアルジャーノ夫人ではなく、当主様が判断されるのなら、もしかしたら公正に判断してもらえる可能性がある。


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