彼の異変
午後の昼下がり。
私はニコラ様、グレン様と一緒に聖堂に訪れていた。
王都の中にある聖堂ということもあり、建物の外見は一際大きく、室内は見渡せるほど広く、幾つもの椅子と中央に煌めくステンドグラスの下に女神像が飾られていた。
まだ建設中とあって所々作りかけの部分が見て伺える。
「とても神秘的で素敵ですね!」
「気に入ってくれて嬉しいよ。まだ建設中だけど完成したらここにピアノ、またはオルガンを入れる予定なんだ。ニコラきみの意見を聞かせて欲しい。建物に防音の調節をした方が良いだろうか?」
ニコラ様は近くの壁を手でトントンと軽く叩き、グレン様に視線を向けた。
「これって既に防音の調整をされていますよね?壁自体に厚みがあるような気がしますし」
「ああ。だが王都の聖堂は他の聖堂に比べて多い。だからこそ防音効果が満足に出来ているのと全体的のデザインをきみの意見が聞きたいんだ」
ニコラ様はグレン様の言葉に対して少しだけ考えるように顎に手を当てる。
「そうだな。兄上が懸念されていましたとおり、もう少し防音を調節した方がいいかも知れません。神官、聖女の他にも王族が出入りする可能性があるのならば尚更です。全体的のデザインは好みになりますが俺はこのままで良いと思います。シンプルで美しいデザインは好まれますし、逆に別の要素を足せば見栄えは悪くなります」
「そうか。ならそうしよう。でも良かったよ。きみに見てもらえて。建設関係のデザインのセンスは僕よりもニコラの方が高いからな」
「別にそのようなことは…」
「旦那様、凄いです!壁を叩いただけで防音の調整がわかるなんて!」
私はニコラ様に近づき、尊敬の眼差しで彼を見た。
私だったら分からないことをニコラ様はいとも簡単に言い当てた。
まるで魔法のようだと感じた。
ニコラ様は私の顔を見て一瞬だけ切なそうな顔をしたあと、私からすぐに視線を逸らした。
(旦那様…?)
「こんなこと何でもない。この程度のことでいちいち褒めるな」
「セシリア。きみはどうだったかな?」
「はい。私は特になく。とても美しく素敵な聖堂だと思いました。申し訳ありません…。大したことが言えずに…」
「大丈夫だよ。とても貴重な意見だからね。意見を貰えるだけでも嬉しいよ。二人の意見を参考に建設の方を進めさせてもらうよ」
そう言ってグレン様は聖堂の中の中央にある女神像の方に向かって歩き出した。
どうやら聖堂の中を視察をしているようだった。
「セシリア。少し話がある」
私の顔を見てニコラ様は神妙な表情で言った。




