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生まれ育った故郷

まっさらな青空の下。

初夏を感じさせる生暖かい風を感じる中で私は目の前の屋敷を見上げて感嘆な声で呟いた。


「ここが…本家の屋敷…」


目の前には煌びやかで豪華な屋敷が立っていた。

現在、私が住まうアルジャーノ家の屋敷より一回り、二回りも大きい。

数日経った私はニコラ様、グレン様のお二人共にアルジャーノ家の本家に訪れていた。


(まさか本当に私までお二人のお仕事に一緒に来ることになるなんて…)


私は緊張しながら前を向いた。

お二人のご迷惑にならないように頑張らなきゃ。


「セシリア。何をやっている。行くぞ」

「は、はい!」


ニコラ様に促されて私は彼の隣を歩く。


「セシリア…」

ニコラ様は僅かに思い詰めたように静かに話す。


「これから母上に会うのだが、母上はとても厳しく、変わった方だ。お前に対して不愉快な態度を取るかもしれない。その時は俺が何としても護る。だからできるだけ俺の傍を離れないでくれ」


「気遣って頂けてありがとうございます。私は大丈夫です。それに結婚後の挨拶がまだでしたので今回挨拶が出来るなんて嬉しいです」


「お前…」


ニコラ様は驚いた顔をしたあと、私から視線を逸らして素っ気ない態度で返した。


「ふ、ふん。随分と呑気だな。そんな甘い考えではあの人の嫌味なんて耐えられないぞ」

「大丈夫ですよ。それなら実家で思う存分に鍛えられましたので」


「はい。そこイチャイチャしないで早く中に入ってもらえるかなー?」


「何を馬鹿なことを言ってるんだ」


ニコラ様はため息混じりで呆れた顔をした。

そうして。

私達は目の前にある屋敷の中に足を踏み入れた。


屋敷の中は広く、所々に豪華な調度品や美術品の絵画が飾られており、私は思わず圧倒されてしまう。


(こんな凄い屋敷が旦那様のご実家なんて…)


アルジャーノ家のことはニコラ様と結婚する前から知っていた。

とは言っても王都、王族が所有する建物の建設を生業とした仕事を担っている貴族ということぐらいだ。

屋敷を見るればそれだけ裕福な暮らしをしている貴族だと推測はできる。


爵位は申し分なく高いが、王族に王族が所有する建物の建設を任されているのなら、彼らの信用も厚いはずだ。

もしかしたら仕事次第では爵位だって今より上の爵位を賜る可能性だってある。


だけど旦那様は契約結婚の相手にどうして私を選んだのだろう…。

手頃な相手が良かったとはいえ、彼なら選び放題なはずなのに。


しかし私にとって彼との関係はこの上なく、理想の関係だ。

私はビクトリアス家から逃れたかったのだから…。


「あら?帰って来たのニコラ」


突然、声がして後ろを振り向くと二人の侍女を従えた派手なドレスに身を包んだツリ目で目つきが悪い美しい年配の夫人がいた。

ただならぬ威圧感に思わず圧倒されてしまう。


「母上……」

ニコラ様は顔を僅かに曇らせて呟くように言った。


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