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初恋の人

グレンはニコラに用意された客室にいた。

掃除が行き届いた綺麗で清潔な部屋で調度品や美しい薔薇の花が飾られている。

アルジャーノ家の豪華な屋敷に比べたら些か簡素でシンプルなものに近いがグレンにはこのくらいが調子ど良いと感じていた。

グレンはソファに座り、顔を歪め、髪をくしゃと掻きあげた。


(あのネックレス…。まさか彼女が…いや、そんなことは…。だけど僕が見間違えるはずがない。あれはあの時のものだった。じゃあ、彼女が…)


グレンは一人の女性を探していた。

彼はアルジャーノ家の妾の子だったが、類まれなる才能で当主である父親に目を掛けられていた。

本妻の息子であるグレン。

妾の子であるニコラ。

本来ならば本妻の息子であるグレンが次期当主になるのだが、グレンは当主の座は興味がなく、辺境地の領主をやっている。

アルジャーノ家は代々国の建築物に携わる仕事を請け負っている家系であり、グレンは元々建築物に興味があった。

だからこそ次期当主に選ばれるのは苦痛ではなかった。


そんな中で一つだけ叶えたい願いがあった。

初恋の少女を自分の手で幸せにすること。


グレンは幼い頃、王族主催のパーティーで一人の女の子と出会った。

それは自分が変わるきっかけをくれた人。

その時、彼女は妹に大切な母親の形見であるネックレスを壊されて涙を流していた。

グレンはそれを直してあげたのだ。

その時、彼女がお礼の言葉と共に見せた花が綻ぶような微笑みにグレンは落ちてしまった。


それから彼女の行方をおった。

彼女を見つけて彼女を自分の婚約者にしたい。

妾の子である自分には部相応の願いかもしれない。

だったら、それな見合うだけの努力をするまでのこと。

グレンは父親が求めるような人物になる為に勉学、武術、知識を蓄え続けた。

だけど初恋の女の子はいくら探しても見つからない。

社交界に参加もしていないようだった。


だけど弟の妻のセシリアと会って衝撃を受けた。

彼女は初恋の女の子が付けていたネックレスを付けていた。

そしてあの時と同じセリフをグレンに言った。


『これは私の亡くなった母の形見なのです』


グレンは吐き捨てるように悲しみを滲ませながら呟く。


「まさか、ニコラの妻になっているとはな…」


人違いかもしれない。

彼女とは別人かもしれない。

そう思おうと思った。

だけど彼の直感が物語る。

自分が探し求めていた初恋の相手は彼女だと。


だが弟の妻となっては自分の想いを捨てなければならない。

この想いは迷惑だ。

だからこの想いに蓋をしなければならない。


「これが運命だと言うなら残酷だ…」


グレンは感情がない混ぜになりながら一人呟いたのだった。


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