2人だけのデート 2
「まいど!」
旦那様は料金を店主に渡した。
「行くぞ」
歩き出す旦那様の背を追い掛けながら私は彼に言った。
「あ、あの旦那様…これ」
「気まぐれで買ったものだ。お前の好きにしたら良い」
(私の為に…)
彼がプレゼントしてくれたことは前にもあった。
彼から初めてもらった髪飾り。
あの時は初めてもらった贈り物に心が踊った。
生まれて初めて私だけに向けられた贈り物だったから。
だけど、髪飾りも今私の手の中にあるカントレラも彼は私のことを思って贈ってくれたもの。
私は贈り物に彼の気持ちがこもっている感じがして心が満たされるように暖かく感じ、幸せな気分になる。
私は彼からもらってばかりだ。いつかこの気持ちを彼に返したい。
「旦那様。ありがとうございます。大切に致しますね」
「好きにしろと言ったはずだ」
彼は私に素っ気なく答える。
だけど耳が赤くなっており、顔を背けていた。
きっと照れているかもしれない。
「はい。そうします」
可愛い人だ。
私は旦那様に気づかれないように小さくクスッと笑った。
****
「いや、まさか領主様に起こし頂けるなんて思っていませんでした。御足労して頂き、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ無事に収穫祭が行うことが出来まして何よりです」
村長と旦那様は二人でそのような会話を交わしていた。
私達は町の中央に立てられている大きな御神木の前に向かった。
そこには神棚があり、収穫した野菜などが沢山並べられており、村長がいた。
私達は村長にお祝いの挨拶をしたのだった。
村長は70歳くらいの白髪の老人で人当たり良さそうな穏やかな顔をした方だ。
私もセントシスに嫁いで来て以来なかなかタイミングが合わずに挨拶出来ずにいた為、彼とは今回初めて言葉を交わした。
「それにしても、今回の祭りの功労者は何と言っても奥様ですな。あなた様のおかげでこうやって祭りが出来るわのですから、本当に感謝しないと」
マズイ…。
私がここに来た理由は領民達から旦那様の誤解を解きにきたことであって、私を称賛して欲しい訳ではない。
「でも、私は…!」
「セシリア」
慌てて否定しようとする私を旦那様は制した。
それは僅かに諦めた顔をしていた。
私は口を開き、何かを言いかけて閉じた。
彼は自分の事情を語るなと彼の目が物語っている。
旦那様の望まないことはしたくはない。
これは私の独りよがりだったのだろうか…。
少しだけ落ち込んだ思いでいる私に村長は優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ。奥様。全てわかっていますから」
「それって…」
村長の言っている意味が理解できず、私は不思議な顔をする。
そんな中、突然後ろから声を掛けられた。
「領主様!奥様!」
振り向くと、そこには食堂の女将とウェイトレスの姿があった。




