私の目的
領民達の誤解を解くにはどうしたら良いんだろう…。
さっきの旦那様の様子では自分から誤解を解くような真似はしない。
きっとこのままだ。
「収穫祭旦那様も一緒に行けばいいのかしら」
(そうよ!収穫祭に旦那様も一緒に参加して、そこで誤解を説けば良いんだわ!)
私は思い立ち、すぐに行動を起こすべく動いた。
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収穫祭当日。
朝食を終えていつものように旦那様が執務室に戻ろうとしていた旦那様を呼び止めた。
「旦那様。今日私とデートして下さい!」
「は?何を言っているんだ。お前は」
旦那様は訳が分からないような顔で私を見た。
だけどそう言われるのは織り込み済み。
絶対に計画を成功させて見せる。
「私達は夫婦ですよね。なのに一度もデートしたことがありません。なので一度くらい旦那様とお出かけをしたいと思いまして…」
「私達は契約結婚だ。そんなことしなくても別に問題はない。互いの役割を果たせば良いだけの話だ」
「だけど、契約結婚とはいえ領民達に夫婦仲を見せておかないとアルジャーノ家夫妻の仲は良くないと噂を立てられてしまいます。そうなっては私達にとっては不利ではありませんか?」
「デートに行くならば何も今日でなくとも良いだろう。こんな地方の領地ではなく令嬢達が好むような店がある王都の方が…」
「もしかして…私とのお出かけを考えて下さっていたのですか?」
「ち、違う!これはだな…」
旦那様は顔を赤くして否定した。
彼は否定するがもしかしなくても旦那様は私と出掛けることを考えてくれていたようだ。
私のことを想って下さっている彼に対して私は嬉しく思ってしまう。
だけど今回の目的はデートではない。
私は柔らかい表情を向けて旦那様に言った。
「私は王都ではなく旦那様と一緒に町を見て回りたいのです。それだけで満足ですから」
「お前は本当にそれで良いのか?」
「はい!」
私は旦那様の言葉に笑って頷く。
旦那様は何か言いかけて口を閉ざし、再び開いた。
「わかった。出掛ける準備をして来い。私も用意をして来る」
そう告げると旦那様はそのまま廊下を歩いて行った。
(やった!上手くいったわ!)
これで旦那様をデートだと称して収穫祭に連れて行ける。
騙すような真似で収穫祭に連れ出すのは正直罪悪感があるけれど仕方がない。
本当のことを彼に話してしまえば彼から断られてしまっていた。
(私も準備しなきゃ)
私は自室へと歩いて行ったのだった。