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彼の話

執事から広間に通された私はアネモネが用意した紅茶を一口飲む。

紅茶のすっきりとした味が口の中に広がった。

私は紅茶をソーサーの上に置いて目の前の執事の顔を見た。


「奥様は先程、旦那様のことをお聞きしたいと申されていましたが一体どのようなご内容なのでしょうか?」


「今日街に行ったら聞いてしまったの。旦那様が領民達が楽しみにしていた収穫祭を取りやめようとしていたということを…。もちろん私は旦那様が理由もなく彼らにこんな話をしたのでは無いことはわかっています。だけど…どうして旦那様はそのようなことを……」


本当は旦那様に直接訊ねるのが筋だろう。

彼に確かめもせずに執事に聞くなんて。

だけど旦那様の性格では私がいくら聞いても理由を教えてくれないかもしれない。

それに今の旦那様は領民達と確執がある。

私はその原因が何なのか知りたい。

偽善かもしれないけれど私は旦那様と領民達の誤解を解きたいと思っていた。


「申し訳ありません……。本来なら私が直接旦那様にお聞きすれば良いのに…。でも今の旦那様は私に話してくれないかもしれなくて……」


「いえ、セシリア様のおっしゃるとおり。あの方は本当のことをお話になれないかもしれませんね。今の旦那様はご自分のことを話すのがあまり得意ではありませんので。昔は私になんでも素直に話してくれたと言うのに。すっかり生意気になられて……」


執事は不満そうにぶつぶつと旦那様の小言を洩らす。

彼は旦那様が幼い頃から一緒にいたのかもしれない。

執事はため息をついて私の方に視線を向けた。

その視線に思わず私は緊張する。


「奥様は旦那様が大雨の時にずぶ濡れになって帰って来られた時のことを覚えておられますか?」


「ええ。確かあの時は仕事で誰かにお会いになりに行ったと聞いております」


「そうです。旦那様がお会いになられた相手は隣町にいらっしゃるミドル公爵様です。ミドル公爵様は旦那様が領主になられた時に何かとお力になって頂けた方」


「もしかして…収穫祭の件と何か関係があるのですか?」


「私にお話できるのはここまでです。後は旦那様にお聞き下さい。大丈夫です。セシリア様が坊っちゃま…旦那様を押せばきっと旦那様はセシリア様にお話して下さいますよ。何せあの方は貴方に弱いのですから」


執事は私に穏やかな笑顔を向けた。


(そんなことないと思うのだけど……)


やはりここは自分で旦那様に訊ねるしかない。

彼が話してくれるかどうか分からないけれど、やってみないと前に進めない。


「ありがとうございます。私旦那様に聞いてみます」

「ええ。応援していますよ」


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