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最悪な家族たち

「ちょっと、セシリア。先程使いに頼んだとき伯爵様からのお返事貰ってきてないのかしら?」


「申し訳ありません……。伯爵様は用事で屋敷を空けていると侍女の方が申されておりましたので、頼まれていた品物をお渡ししてまいりました」


私は義母に申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。

彼女は睥睨した目で私を見下ろす。

私は後悔した。

義母が滅多に訪れない場所である物置から掃除をすれば良かったのだと。


私の生みの母親であるお母様は私が幼い頃に病気で亡くなり、一年後に美しい踊り子であった義母と再婚した。

私は父に愛されず、父は義母と美しい容姿を持ち、要領が良く、甘え上手な義妹を可愛がっていた。

私は家族たちから使用人のような扱いを受け、義母、義妹から冷遇されていた。


「はぁ…使えない娘ね。使いの一つも出来ないなんて」

「申し訳ありません……」


「でも、いつ見ても醜いわね。シリカとは大違いだわ。本当ははやくこの屋敷から出ていって欲しいのだけれど、あなたみたいな醜い女を誰も妻にしたいと思わないわよね。仕方なくこの屋敷においてあげているのよ。感謝しなさい」


「はい……」


「何よ。その顔は!」


義母は私の足の上からヒールで踏んだ。

足に鈍い痛みが走り、私は思わず顔をしかめた。


「うっ……」


「誰のお陰でこの家に入れると思っているのかしら?言ってみなさい」

「奥様のお陰です……」


痛みに耐えながらも私は彼女が望む言葉を口にする。

そうしなければ今以上に酷い目にあうと理解していたからだ。


「お母様何をしているの?」


後ろから声が聞こえて振り向くと義妹のシリカとセパード男爵家嫡男であるセリム様がいた。

義母はセリム様の存在に気づくとすぐに私から離れて何事もなかったかのように振舞った。


「あら、セリム様。ごきげんよう。

いらしていたのね」


「はい。本日はシリカにお茶に誘われてお邪魔させて頂いております」


「今日セリム様とお会い出来るの心待ちにしていたのですよ。この前の夜会のとき以来からお会いしていなかったですもの」


シリカはセリム様の腕に自分の手を絡めて、自分の胸を押し付ける。

シリカが着ているドレスは純白の美しいドレスで彼女の金髪にとても映えていたが若干胸が空いていた。

貴族らしからぬ下品な行為。

しかし、妹はそんなこと気にしていない様子だった。


「そうか…。あの悪いが、腕を話して貰えたら嬉しいんだけど…」


顔を赤くして遠慮がちに言うセリム様に対してシリカは涙目でショックを受けた態度で彼に訪ねる。


「セリム様は私のことが嫌いになったのですね!」


「そんなことはない。きみのことは愛しているんだ。きみを傷つけるつもりはなかった。ただ人前だから…その恥ずかしくなってしまって……」


「まぁ!そうでしたの!良かったです。セリム様に嫌われたわけではないのですね」


二人の世界に入っているのを見て、私は静かにその場から消えようとした。

ここにいてもいい事はない。

このまま静かに消え去るように立ち去ろう。


踵を返す私にセリム様は話しかけてきた。


「セシリア。久しぶりだね。元気にしていたかい」


「はい。セリム様もお変わりないようで良かったです」


「そうだ。セシリアも今から僕たちと一緒にお茶にしよう。久しぶりにきみと話したいんだ」


「いえ……私は遠慮しておきます。まだ仕事が残っているので……」


「仕事?」


私の言葉にセリム様は不思議そうな顔をする。

セパード男爵家とビクトリアス家は古くからの付き合いがある。

彼と私は幼馴染だ。

お母様が亡くなる前までは婚約の話があったのだが、今はシリカと婚約をしている。

彼は私が家で使用人同様の扱いを受けていることは知らない。

もし彼に知られてしまえば彼は私を助けるためにお父様に抗議してくれるかもしれないが、それだけだ。

彼は自分が悪者にはなりたくはない偽善者だ。

昔妹のように可愛がっていた私を自分が助けた事実が欲しいだけ。

それだけだ。


きっとお父様に抗議したところでお母様たちの行動を止められるわけがない。

別のやり方で私への扱いが酷くなるだけ。


「お姉様は家事がお好きでいつも侍女のようなことをされているのですわ。だからセリム様が気にする必要はありません」


「だが…」


「シリカの言うとおりです。大変申し訳ありません。失礼致します」


これ以上、ここにはいられない。

私は逃げるように慌ててその場を後にした。


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