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彼の事情

目が覚めると自分の部屋だった。

いつの間に自分の部屋に戻って来たのか考えを巡らせながらニコラは気だるい身体をベットから起こす。

先程まで熱に浮かされ、胸が苦しかった。

しかし今はそれは不思議と無くなっていた。

ニコラは誰かが自分の手を握っていることに気づき、視線を向ける。


「!?」


彼は今日を虚をつかれたように驚いた。

そこにはセシリアが静かな寝息を立てて眠っていた。

ベッドの近くの棚には薬と水差しが置いてある。


(もしかして、彼女が俺を看病してくれていたのか……?)


セシリアの性格ならそれくらいはするかもしれない。

彼女がこの屋敷に来て二ヶ月程経ったが、セシリアは他の令嬢とは違い、自分から率先して使用人たちの掃除、料理の仕事を手伝い、自分で庭で畑を耕して野菜を作る変わった令嬢だ。


他の令嬢なら贅沢を許さない、愛がない契約結婚といっただけでこの屋敷を出て行くはずだ。

しかし彼女は笑顔でそれを承諾し、使用人達を家族のように大切に接している。

使用人達もセシリアの素直で優しい性格に惹かれて今では彼女を女主人と認めている。

まさかあの頭が固いシトラスまでも認めさせたことには驚いたが。


(こんなふうに誰かに看病されたのは初めてだったな。病気の時はいつも侍女が薬を持って来るだけだったしな)


ニコラはアルジャーノ家の次男。

腹違いで父親の愛人の子である兄がいた。

しかしニコラは正妻の子供。

ニコラの母親はニコラが公爵家の当主になれば公爵家を思い通りに出来るのだと思い、ニコラを当主の座に就かせようとしていた。


欲しいものは何でも与えられた。

自分が我儘を言えば全て叶えられた。

だけど心から本当に欲しいもの……。

『愛情』だけはどんなに願っても手に入らなかった。

虚しさだけが募り、当主の座が用意されてもそれはニコラにとってどうでもいいもの。

不要なものだった。


ある日。

ニコラは家庭教師の授業をサボった。

当主になる為に剣術、勉強、礼儀作法全てを幼い頃から強要された。

張り詰めた感情が切れてしまい、嫌になって誰もいない屋敷の裏庭の隅に隠れていた。

誰も自分を見てくれない。

優しくしてくれるのは時期当主の可能性があるからだ。

そんな思いを抱えていた。


「そこに誰かいるのか?」


茂みの中からガサッと音がし、現れたのは腹違いの兄…ダレンだった。

金髪の髪に金色の瞳。

子供ながらに整った顔立ちに柔らかい雰囲気がある。


(兄上…!?)


ニコラはダレンの姿を見て驚きを隠せなかった。


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