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AL2−18
「······は、はい、勿論。どうぞ。」
動揺を隠しきれないまま、部屋へ促す。
彼女は優しく微笑んで会釈すると、
しなやかな足取りで入っていった。
すぐ横を通り、ふわりと
フローラルな香りが届く。
うわ。いいにおい。
しかも、着物姿だ。
見られるなんて、思わなかったな。
尊い。尊すぎる。
もう、釘付けだった。
部屋の中央くらいで立ち止まり、
くるりと僕の方へ向き直ると
乾さんは、深々と頭を下げる。
「貴也様の、貴重なお時間と空間に
踏み込むのは······失礼極まりない事だと
自覚しております。
改めて深く、お詫び申し上げます。」
「······そっ、そんな······
全然、いいですよ。頭を上げてください。」
まさか、ここまで
会いに来てくれるなんて思わなかった。
かなり嬉しい気持ちと同時に。
ここへ訪れたのは、
彼女の意思なのだろうかと。疑問が浮かぶ。
「何か······ありましたか?」




