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FL−21
この感覚。これは、残像?
何で今、これが?
杏奈の残像は、俺の胸の中で泣いている。
そうか。あの時。
ここで、ずっと泣いている彼女を
俺は抱きしめていた。
彼女の誕生日と、両親の命日。
最高で、最悪の日。
ここで過ごした時間は、大半が
彼女の涙で溢れていた。
それを俺は、ただ寄り添うことしかできずに。
慟哭する残像の彼女を、胸に。
腕を回すように、
ソファーの背もたれに腕を置いた。
こうして、
見つめることしかできなかった。
今でも、それは。変わらない。
生きている限り、この日はやってきて
彼女の心の傷を抉る。
だから俺は。
その度に寄り添って、包み込む。
丸ごと全部。何もかも。
杏奈という存在を。
これから先、ずっと。
伝えるんだ。愛していると。




