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「お待たせ、朔耶くん。制服は、
リュックに入れさせてもらったよ。」
「さんきゅ貴也。」
「昌耶さんは?」
「先に車で待ってるって。」
「じゃあ、そこまで持っていくよ。」
何から何までお前は。ありがとう。
さてと。美しい眠り姫。
下僕が、車へ運んで差し上げます。
起こさないように、そーっと······
柔らかい。あったかい。
羽根のように軽いけど、確かに重い。
この温もりを、これからもずっと護りたい。
お疲れさま。杏奈。
帰ろう。
自動ドアが開くと、強めの風が吹き込んだ。
夜空には、まばらに星が浮かんでいる。
「······少し、気づいていたんだ。」
囁きが、流れに乗って耳に届いた。




