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勘違いしてた。
いや、無理もない。
冷たい態度と裏腹の気持ちなんて。
本人たちにしか分からない。
愛情を、押し殺してまで。
恨まれても構わないとしてまで。
しきたりを重んじた。
吸血鬼という、尊厳の為に。
「······うん。僕は、僕の道を行くよ。」
貴也の表情には。
微笑みと、涙が浮かんでいた。
「だから、言わせてもらうよ。
未来を見据えて、末永く生きてほしい。」
こんな形が、あるなんて。
想像もしていなかった。
「心得た。」
短く告げた貴也の親父にも。
微笑みが浮かぶ。
その二人を交互に見て、
緋葉さんの表情が変わった。
今にも、泣き出しそうな。悲しそうな。
そして、穏やかな。
きっと。もう押し隠さなくていいと、
安心した顔だ。
「······成長したわね。貴也。」
その一言で、涙が溢れる。




