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興奮するあまり、杏奈を
ぎゅーっとしてしまった。結構な力で。
「いたたたっ!」
「あぁぁごめん!」
「もうっ、うふふっ」
てへ。
杏奈も笑っている。だよな。
乾さんのバックハグ。奇跡すぎる。
ヤバいだろ。
貴也。おい。
この角度からじゃ見えないんだって。
どんな顔してんだよ。ぐふふ。
「さぁ。私たちも、
会長の元へ参りましょう。
迎えの車をご用意しています。」
あ。バックハグが離れた。
まだ、してもらってて良かったのにぃ。
貴也は、固まって動かねぇな。
ぐふふ。いいぞぉ。浸りたいよなぁ。
「乾さん。この人······」
「あぁ。はい。」
杏奈も、流石に気になったらしい。
跪いて空を見上げたままの、石井 輪冶。
ようやくそいつの前に、
乾さんが歩いていく。
「お立ちなさい。」
投げられた一言。
何だか、女王様っぽく聞こえた。




