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みんなが注目する中、俺と杏奈は
向かい合い、目を合わせた。
見上げる彼女の表情は。
どんな状況下でも、俺の胸を
ぎゅっとする。
杏奈。
俺が今、こうして地に足をつけて
立っていられるのは······
お前が、いるから。
貴重で尊い血を、分けてくれているから。
ありがとう。
想いを込めて、彼女の頬に手を添えた。
潤む瞳は、奥まで覗けるくらい
澄んでいるから、
潜りたいと思ってしまう。溺れたい。
白い首筋は、ほんのり赤く染まっていた。
飲みたい。
ただ、その本能だけが。
俺を、突き動かす。
「んぅっ······!」
小さい呻きとともに、俺の腕を掴む
彼女の力が強くなった。




