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その申し出に、またか、とは思った。
ある意味、公開処刑に近い。
しかし。
それが、有効なら。
「······朔耶。」
杏奈が、俺の腕に寄り添って
見上げてくる。
その目を見て、杏奈も
俺と同じ意思だと感じ取った。
「朔耶くん······」
貴也が、申し訳なさそうに呼ぶ。
お前が、悪いと思う必要はない。
「分かった。それで、信じてもらえるなら。
ただし、条件がある。
会長が見据える吸血鬼の未来に、
協力してくれ。」
尊厳を捨てろ、とまでは言わない。
少しだけ、譲歩してくれたら。
「名乗るのが遅れて申し訳ありません。
私は、乾と申します。
吸血鬼協会のコンシェルジュ、
会長の秘書を務める者です。
······
朔耶様と貴也様の、仰る通りです。
下れ、とは申しません。
手を取っていただけたら、
血の提供を保証する、と。
兎川会長のお言伝てです。」




