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貴也が口を開く事に、乾さんは止めない。
その意図は、きっと。
会長の意思でもあるのだろう。
「血狂いを起こさず、フルパワーで。
今、朔耶くんに敵う吸血鬼はいない。
その事実があるのに、父さんたちはまだ
目を逸らすの?」
二人は、言葉を失っている様子だった。
嘘だ、デタラメだと言えないのは。
どんな質問でも、隠さず答える。
そんな貴也本人の姿勢に、隙がないからだ。
「僕が、この場に立てたのも。
父さんと母さんに伝えられるのも。
会長たちの研究が、あるからこそだ。
同士討ちなんて求めていないし、
逆に協力して、この困難を解決しなければ
吸血鬼の未来は、ないと。
······会長は、お考えだと思う。」
そうだ。
会長は、そこまで見据えている。
俺たち吸血鬼の、行く末を。シビアに。




