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20-14
「まぁ、言っとくけど······
裕翔に赤い目は使ってないから。
アレ使える程飲むのは、ギリなのよね。」
「尚更、ですよね。」
冷静に響かせる杏奈の表情は、厳しい。
「柏原、あなたに本気でしたよ。
自分を手に入れる為に、
騙したって事ですよね。」
「土下座でもしろって?冗談じゃない。
不確かなものに、
正しいもクソもないでしょ。」
あの、明るい笑顔も。
演技で浮かべてたとは、思いたくない。
「うちらは、死活問題なのよ?
血狂いなんて起こらなければ、
制限される事もないのに。
······ちょっと。輪冶に、何したの?
全然正気に戻らないじゃん。」
確かに。
チャラメンは、跪いたまま
星も浮かばない夜空を見上げて、動かない。
「我が主の、絶え間ない研究と
存続に掛ける······血と涙の結晶。
と、いう事だけお伝えします。」




