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20-13
俺と杏奈は、愕然とする。
「何も知らないまま、踊らせようと
思ったのにね······」
乾いた笑いを浮かべるその人、いや、
吸血鬼は。
「緋葉、さん······」
枕木 緋葉。
「被害者の中に男性がいたのを、
お伝えてしていなかったのは······
既に調査対象として、私たちが極秘に
動向に目を付けていまして、
察知させずに泳がせる為でした。
ご了承ください。」
そういう事、だったのか。
「······柏原に近づいたのは、
杏奈が狙いだったって事か。」
思わず、口に出していた。
信じられなかった。
あれは、演技だったなんて。
「それ以外に、何があるの?」
彼女には、もう
冷え切った笑みしか浮かばない。




