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······何が、起こったんだ?
俺たちは、状況が読めずに
呆然とするしかなかった。
乾さんの細い指が、チャラメンの顎を捉える。
「うふふ······いい子ね。」
微笑みを浮かべる彼女は、天使というより。
妖艶な小悪魔。と、言うべきだろう。
······なぜ、立場逆転したのか。
さっぱり分からないが、貴也は
ちょっと羨ましそうに見ている。
「あなたのお名前を、聞かせてくださいな。」
「······石井 輪冶。」
「あなたのボスは、どこにいらっしゃるの?」
チャラメンが、口を開こうとした時。
何かを察知して、
強制的に乾さんは飛び退いた。
二人の間を割って入る、鋭い風。
微かに、甘い匂いが届いた。
立ちはだかる、その人物は。
「もう。ホント、何やってんの······輪冶。
アンタの勝手な行動のお陰で、
予定がメチャクチャじゃん。」




