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うわ。緊張する。
何か、警察官になった気分だな。
「それでは。私は少し、席を外しますね。
捜査開始前には戻ってまいりますので。」
乾さんは俺たちに向かってお辞儀をすると、
颯爽と部屋から出ていった。
テーブルに残された地図を眺めて、
杏奈は小さく息をつく。
「被害が起きる前に、
捕まえたいところだよね······」
「······そうだな。」
それができれば、ホントに。
こんなに真っ赤になる程だなんて、
思っていなかった。
「父親がやってるなんて、
思いたくないよね······」
そう呟いた貴也の表情は、
憤りと哀しみが入り混じっていた。
「僕が、必ず止める。」
「河野······」
「二人とも、力を貸してくれてありがとう。」
「······貸してくれて、とか。
そんな事言うなよ。当たり前だろ。」
苦しい思いばかりしてるお前は。
差し伸べられた手を取ることも、躊躇うのか。
これからもう、がっちり掴めばいいんだよ。




