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「乾さん。相手は、酒殿を通じて自分の顔を
知っているって、考えていいですよね?」
「······はい。」
「だったら逆に、自分を囮にして
おびき寄せたほうがいいと思います。」
「杏奈。」
それは、ダメだ。
親父にも、言われたじゃねーか。
言葉にせず、じっと見つめると
杏奈は真っ直ぐ見つめ返してきた。
「護ってくれるんでしょ?」
「危険すぎる。」
俺が、フルパワー出せるとしても。
「必ず、釣れると思う。」
「素直に喰いつく奴らとは思えない。」
お前を、危険な目には遭わせたくない!
······って、言いそうになるのを堪える。
「相手は、必ず動くから。その時に、
朔耶の血の匂いセンサーで嗅ぎ取って。」
「一瞬でも遅れたら、命取りになる。
他の方法を考えよう。」
「朔耶っ。」
頑張るとは言ったけど!
お前を囮にして、とは言ってないぞ?!
······って、もう、言ってしまおうかっ。




