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「あの······」
俺は、手を上げた。
「今日、ここに来る前に
フレバニに寄ったんっすけど······」
真っ直ぐ見つめてくる杏奈に、目を合わせる。
「実は、その時微かに
血の匂いがしたんです。」
「えっ······?」
「ごめん。黙ってて。」
「······仕方ないよ。あの時、柏原いたし······」
「朔耶様。詳しく、教えていただけますか?」
「匂いがして、すぐ消えたんです。
今まで嗅いだやつより、全然薄くて······
かき消されて、匂いを辿ることが
できませんでした。」
そう。特定できなかった。
「······そうですか。やはり、
一筋縄ではいかないようですね。」
······くそっ。




