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ぽわぽわが、ぎゅいーんと。
大きくなった彼女の目が、俺に注がれる。
そうだ。俺を見ろ。杏奈。
「······じ、自分こそ、ごめんなさい······」
白い肌が、真っ赤に染まっていくのが分かる。
ここで、ハグでもしたら完璧なのか。
いや。安易だな。ここは、我慢だ。
ふわっと、杏奈の手を解放する。
「すみませんでした。紋白さん。
行きましょう。」
「はい。朔耶様。」
黙って、彼女より先を行く。
背中に受ける視線が、熱い。
よしよし。いいぞ。こういうことだな。
「うふふ······流石ですわ、朔耶様。
飲み込みが早うございます。」
「大事なことを、教えてもらいました。
ありがとうございます。」
弁解する前に。
愛を持って包み込め、ということだな。




