566/650
19−5
「あらあら、杏奈さま。
どうかお鎮まりくださいな。」
「鎮まりませんっ」
「生物的本能ですから。
それを理解なさいませんと、これから
ともに歩くのは苦難ですわよ?」
「分かってますっ。けど、
隣に自分がいたのにっ······」
はわわわっ······
ごめん杏奈っ······
数分前の俺を、ボコりたい。
裸踊りで、お詫びを······
はしっ、と紋白さんは両手で
杏奈の両頬を覆う。
それに彼女も俺も、びっくりした。
「多少、余所見しても。何事も。
包んで差し上げるのです。
それができて初めて、お相手様は安心して
身を任せられるのですわ。」
「も、紋白さ······」
「それができない内は、語れませんわよ。
杏奈さま。朔耶様の隣を歩いているとは。」




