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杏奈をベッドで寝かせた後、俺は
リビングへ戻った。
いつもなら部屋着に着替えるが、
杏奈も制服だし、俺だけラフになるのも
どうかなと思って。
とりあえず、制服の上着だけ脱いで
ソファーに座る。
「お腹空いてるかしら?軽く食べる?」
とんとんとん、と小気味良い音を鳴らして
夕飯の用意をする奏子から、声が掛かった。
「・・・・・・いや、いい。」
血を飲んで、色々満たされている。
ごろんと転がって、瞼を閉じた。
親父が帰ってくるまで、このままでいよう。
普段なら、もう帰ってくる頃だ。
30分くらい経った後に、玄関から音がした。
「ただいま。」
同時に、昌耶の声が聞こえる。
「おかえりなさーい!」
奏子は素晴らしい速さで、リビングを出ていく。




