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初めて、だ。
親父の、吸血鬼たる姿を垣間見たのは。
でも。そうだ。親父は、きっと。
杏奈に教えたかったんだ。
無力だと諦めて動けなくなってしまっては、
命を差し出すようなものだと。
「······両親が亡くなってからの自分は、
生き地獄でした。吸血鬼に復讐するという
隣り合わせの時間を、ずっと漂って。
でも、朔耶と、昌耶さん奏子さんに
出会ってから、変わったんです。
救われたんです。気づいたんです。
吸血鬼は、人を愛せるんだってこと。
······
自分は、あなたたちの為なら
どんな絶望を前にしたって、
生きることを諦めません。もう、
身を投げるような行為は、しません。」
······杏奈。
「足手まといかもしれません。でも、
相手を油断させる策は、立てられます。
幅が広い方が、良い方向へ導けます。
······お願いします。会長へ許可を、
もらえないでしょうか。」




