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すかさず奏子が、リビングのドアを開ける。
その緩んだほっぺた、
思いっきり引っ張ってやりてぇ。
階段を上る度に、いい匂いがする。
杏奈の、髪の匂いだ。
薄い、茶色の髪。
一本一本が細くて、柔らかそう。
白すぎる肌。
両膝裏に掛ける俺の手が、
ひゃーっ、やべぇーっ、柔らけーっ、と
叫んでる。いかん。汗が滲む。
落ち着け。足元気を付けろ。
躓いてコケたら、怪我させんぞ。
両親の寝室のドアは、半開きになっていた。
自分の身体で押して開くと、
目の前に広がるキングサイズのベッドへ
杏奈を、そっと下ろす。
髪が零れて、首筋が晒された。
それを目にして、すかさず
掛け布団で隠すように被せる。
・・・・・・ごめん。こんな事になってしまって。




