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梳くように、そっと杏奈の横髪を
かき上げて、ゆっくり引き寄せた。
血脈が目視できるくらい、透き通る肌。
清らかな首筋は、いつ見てもクラクラする。
俺の唾液に治癒効果があるってのは、
本当に幸いだったと思う。
こんな綺麗な肌に、傷を付けるなんて。
命が幾つあっても償えない。
腹は、満たされている。だが、
吸いたくなる衝動は、抑えられない。
吸血鬼としての俺は、
満たされていないということ、なのか。
かぷり。
ほぼ無意識で、噛み付いていた。
「······っ」
ビクッ、と、杏奈の身体が震えた。
美味いのは当然。だけど、
毎回リセットされたかのように
味が微妙に変わる。
今夜のは、何だろうか。
極上の甘さに、一滴
何かを垂らしたような。
広がって、染み渡る。




