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胸元から、カードキー。
まだ流行ってるらしい。
コンコンコン、と会長は扉をノックする。
「河野 貴也。兎川である。」
『······自身の為に、わざわざ御足労くださり
ありがとうございます。』
貴也には、伝えてあるみたいだ。
カードキーでロックを解除すると、
なぜか会長はカードを胸元に戻さず
俺に差し出した。
「貴殿が持っていろ。念の為だ。」
······念の為。
あいつが脱走なんて、するはずないけど。
でも。会長は、そういう人だ。
可能性がゼロじゃない限り、保険をかける。
俺は何も言い返さず、素直に受け取った。
ガチャン。
両扉が開いた先に、深々と頭を下げる
貴也の姿がある。
フォーマルスーツ姿。めっちゃかっけぇな。
どっかの貴族みたいだ。
「初めまして。皆様方。
この度、眷属の集いに参加できる事を
心から歓喜しております。」




