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「さぁ。行こうか。」
親父のフォーマルスーツ姿は、多分
男女問わず誰もが魅了されるだろう。
滲み出る、経験の積み重ねが違う。
「行ってらっしゃい!二人とも!」
既に目がハートマークの奏子の隣には、
うっとりした杏奈の熱い視線が。
メロメロになっている女たちに、
親父と俺は手を振って車に乗り込む。
「······朔耶。スーツ、よく似合ってるぞ。」
嬉しそうに言って
エンジンを始動する昌耶に、俺は
シートベルトを装着しながら応える。
「親父には負けるよ。」
「僕は普段、スーツが多いからね。」
着こなしの問題じゃなくて。
「なぁ。ここだけの話、会社の女性とかに
誘われたことってないのか?」
ずっと気になっている事を、ここで聞こう。




