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「はい♪ココアどうぞ♪」
まだ奏子は上機嫌だ。
ソファーテーブルにマグカップを置いて、
軽やかに去っていく。
ココアから、白い湯気が
ふんわり立ち昇っている。
季節は、冬を迎えようとしている。
こういう、温かい飲み物が美味しくなるよな。
取っ手を持ち、少しだけ啜る。
程よい甘さ。
母さんが入れるココアは、どんな時も
俺を脱力させてくれる。
いじめられて泣き明かした時も。
この程よい甘さが、ずっと舌に残って
優しく包んでくれた。
こんな、まったりした朝、久しぶりかも。
吸血鬼の調べは、今のところ上出来だ。
今日披露するわけだが、これでまだ
終わりというわけじゃない。
より、クオリティ高いものにしていく。
俺たち吸血鬼が、俺たち人間が、
平和に共存していく為に。




