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「······あの······」
「未来ある学生諸君。大いに
青春を謳歌したまえ。それが、
我が国を明るい方向へ導くのだ。」
「······どちら様ですか······?」
そのおっさんに、俺と杏奈は
互いの肩へぽんぽんと手を置かれる。
「名乗る程の者ではない。
縁あれば、いつか出逢うだろう。
それまで······楽しみに待っているよ。」
微笑みが、輝かんばかりでエグい。
優雅に手を振って、去っていった。
呆気にとられた俺たちは、
その後ろ姿を見送る。
「······何だったんだ、あの人······」
「······不思議な人だったね······」
俺のSスイッチは、お陰で
完全オフにされた。
止められて邪魔されたイラつきすら
かき消すくらいに、そのおっさんの余韻は
その場を支配してしまった。
杏奈も、同じくといった様子だった。




