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放課後を迎えるまで、杏奈とは
何も話していない。
でも、これでいいんだ。
ダチと楽しそうに話す彼女を
眺めるのも、至福の時間だと思える。
まぁ、そのくらい
気持ちに余裕ができたと言っていい。
「大地!じゃあな!また明日!」
去っていく柏原のスピードは早い。
部活は、テスト前だから休みだ。
恐らく彼女と待ち合わせでも
しているんだろう。
あいつが真面目に勉強するところ、
見たことがないからな。
「朔耶。」
あら。控えめな呼び掛け。
「行こうか。」
頷く彼女に浮かぶ、控えめな微笑み。
みんなの目があるからなのか、
少し距離を置いて俺の後を付いてくる。
ホントは、今すぐにでも
手を繋ぎたいところだけど。
 




