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「日下部。起きろ。」
強めに、身体を揺する。
だが、瞼はしっかり閉じられて、
気持ち良さそうな寝息を立てるばかりだ。
「・・・・・・何が、どうなってる・・・・・・?」
杏奈の、急な寝落ち。爆睡。
思い当たる事は、ただ一つ。
俺が嚙んで血を吸った事が原因で、
寝てしまった。それしか、考えられない。
ただ傷跡が、キスマークになるって。
これだけは、何も思い当たらない。
死ぬほど恥ずかしい。
くそっ。
面倒な事になってしまった。
確かこいつ、親元を離れて
独り暮らしだって聞いた。
家がどこにあるか、知るわけがない。
寝てるこいつを抱えて、遠距離を歩くのは・・・・・・
不審者以外の、何者でもない。
・・・・・・
どうする。
 




