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ふと、視線に気づく。
杏奈が、じっと俺を見つめていた。
なーに?何でもしちゃうぞ?
「ふふっ。真剣だね。何を書き出してるの?」
隠す事はないので、記したノートを
素直に差し出す。
「これまで分かった、吸血鬼の事。
ノートに書き出しとこうと思って。」
「わっ。すごい!へぇーっ······
分かりやすいよ、これ。トリセツみたい。」
トリセツ。いい表現だ。
「まだまだ未知数だけどな。」
「そうだね······会長が仰ってたけど、
吸血鬼に関する資料とか、
現代にあまり残っていないらしいの。
会長がご存知の事も、その記述でしか
知り得ないものなんだって。だから、
朔耶が今経験してる事は、吸血鬼にとって
とても貴重なものだと思うよ。」
「······そうだったのか。」
だから、俺の存在は奇跡だと。
生きた標本になっているわけか。
 




